政治組織の活動体として,自由民主党の分析に焦点をおく.西欧先進諸国の政党組織との比較考察を念頭におきながら,党の組織化の度合いを知るための党員率の比較,カルテル型政党としての自民党の構造内における政策立案・決定のプロセスと,それにかかわる財界との構造的結びつきを観察する.政党以上に政治的活動をする田中角栄派の政策立案過程における政治機能のスケッチについてもふれておく.
宗教団体の典型であるカトリック教会が,最大最古の組織として有効に機能しているゆえんを,宗教団体の特徴にそくしつつ,同時に組織論の立場から解明するため,まず教会の実体を解明し,ついで通常教会の組織と思われているものを説明した上で,教会存続の鍵が霊的共同体として絶対不変の使命を貫きながら,他方,この世に開かれた組織体として,たえず刷新を繰り返してきたことにあることに言及した.
宗教組織を特色づける超俗と世俗の2面性と2面の相互規定に注目しつつ,組織の分節化に伴う宗教的権威の下級委譲,信仰中枢と地方的単位との関連,地方的単位の組織形態を考察し,導き系統制から地区ブロック制への組織原則の展開に対応して,組織モデルに「いえ=おやこモデル」から「なかま―官僚制連結モデル」への推移を想定する.
経営体としてみた病院組織には,当然,経営機能,管理機能,作業機能という三つの機能が含まれ,その各機能場面ごとに組織展開が行われる.この場合,自立業務としての経営・作業機能と付随業務としての管理機能を概念的に明確に区別することが必要である.
経営体の組織構造や活動を解明するには,生体の体内構造との類比が有効である.今後は組織論は社会生態系といったところにまで及ぶべきである
わが国の病院は,組職論的にも機能の面でも医師中心の一元的組織であった.昭和20,30年代の組織の再編成によって,医師以外の職種は初めて独立部門となり,加えて,専門職化の努力を開始した.一方,医療費の高騰と病院組織の複雑化は,管理の専門スタッフの必要性を高める.こうして,役割・地位構造の多元化が進み,異種専門職問のライン・スタッフ論的連繋,専門職的権限と管理的権限との調整が,今後の重要な課題となる.
組織の比較研究を考えるには,まず,拠りどころとなる組織論の性格を明らかにしておくことが重要であろう.ここでは,試みとして,それらを純公理主義・現実主義・疑似公理主義・検証主競に区分して,それぞれによる比較研究の性格を考察した.さらに,比較の対象としての組織構造と組織行動をめぐる問題にも若干ふれている.