本稿は,既成の階層的権限構造の克服を目ざす「参加・自主管理」型産業民主主義の思想や運動の系譜に立って,この思想や運動に対して社会―技術システム論のもつ実践的理論としての可能性をこの理論の全体像把握を通じて確かめようとした.併せてこの思想や運動が社会―技術システム論を手段として利用する場合に解決すべき問題と条件の検討をも行なった.
トップ・マネジメントは,組織内部で進行する環境適応プロセスに対してそのリーダーシップを行なう.とりわけ,かれらはその組織を制度へと変換することで,組織性格を与え,ダイナミックにその適応行動を引き出してゆく.本論文は,日本企業のトップの実証分析から,これまでのリーダーシップ論と戦略論との結合を図りつつ,トップ・リーダーシップの解明とそのダイナミズムを分析する.
筆者は日本の大企業102社の製品市場戦略と業績との関係,トップ・マネジメントとの関係,目標との関係,戦略と組織構造との関係を調査したが,ここでは多角化のみをとりあげて,これらを分析する.
102社のうち約40社は専門化(準専門化を含む)企業である,専門化企業と多角化企業とを通じて,業績の最もよいのは,技術とマーケティング双方関連の多角化企業である.
日本では多角化していても,事業部制をとらないで,機能別の組織のところが多く,また本社が強大である.環境変化に戦略を適応させるためには,むしろ集権的組織が適しているといえる.
非市場的組織なるものが,個々の経済主体にとって何如なる存在として存在するかを考えてみることにしよう.主題はそれゆえ,「非市場的組織とは何か」であり,また,「定義された非市場的組織がどんな性格をもつか」を考えることである.そして,表題の示すように,主たる主張は個々の経済主体の経済的動機の性格と,非市場的組織なるものは強い関係があるということである.
組織活動の産出成果が市場での交換に適さない典型例の一つは,行政組織であるといえる.その特色を日本の中央行政を素材にして考察する.その際.統治過程の特性と関連づけて企業経営との直要な差異に着目しつつ,組織目的の設定の外在性,行政の供給力,「一視同仁」の原則等,行政組織の特異性を理解する視点を概説する.また,なぜ行政組織においては評価作業が軽視されているのか,また評価作業にはどのような困難が伴うかについても言及する.
最近話題になっている組織文化の形成・変革という問題が,組織成員によるパラダイムの共有という視点から分析される.パラダイムとは,人びとの問で暗黙に共有されている知識体系であり,組織の価値・規範を正当化するとともに,人びとの活動を組織化するための手段となる.本稿では,パラダイムはいかにして伝達・伝承されるかが分析され,組織文化の形成・変革の方法が,パラダイムの完成,共有,転換という視点から検討される.