今後の日本的経営に強力な衝撃をあたえる主要な要因とその性質をまず検討する.次にそれらの要因の衝撃度はかなり強いが日本的経営がたくみに対処すれば衝撃の吸収は可能であると論ずる.ただし,吸収の困難性は残るし,また衝撃によって日本的経営の展開の局面が変ることは避けられないと考える.最後に日本的経営の未来は日本社会そのものの未来と不可分であり,日本的経営の中に経営理論の普遍性を見出すべきことを主張する.
第2次臨調第4部会報告を直接の契機として,いま公企体の経営と労使関係が注目を集めている.その現状を改善していくためには,職場社会のあり方を変えていく必要がある.実際,民間大手企業と公企体(国鉄と郵政)の職場実態を比較してみると,驚くべきちがいがみとめられる.そのちがいを観察し,その原因を問い,さらに「有機的」連帯モデル形成への道筋を探る.
労働の人間化を推進する有力な方法として,社会・技術システム論による責任ある自律的作業集団とQCサークルが世界的に注目され,多くの国で導入されている.しかし,これらにも限界がある.また,日本における作業組織の再編成,欧米におけるQCの導入には,それぞれの国の労働市場と組織のあり方による問題点もある.そこで,これらの点について検討し,労働の人間化とその基礎理論の展開のためには,何が必要かを考察する.
科学・技術の高度化が進むにつれて企業組織,ことに日本の企業組織がどのように影響を受けてゆくか.この問題を企業組織の論理と研究の論理の交錯を推論の根拠としつつ,若干の妥当と考えられる前提をもおいて考察している.事業部制の現状を再確認し,そこに起ると思われるSBUや社内ベンチャー,中央研究所再編の影響,あるいは研究活動の管理運営をめぐる政治的プロセスの台頭など,組織機構とその運営の両面にわたって展望を行っている.
日本の海外進出企業は新たな試練の時を迎えている.一つは途上国市場での生き残りであり,もう一つは先進国への進出である.新しい環境に適応するためには戦略経営システム全体の改革が不可欠である.ここでは,繊維と電機企業を事例として,これからの国際環境に適合した戦略経営システムのあり方を摸索する.
ウィリアムソンによる取引統御機構論は,単に,市場,中間組織,階層組織という主要形態間のみならず,種々の組織代替案というサブ形態間の選択決定問題をもカバーする理論であり,組織選択の一般理論と見なしうる.本稿は,そうした彼の理論に準拠しつつ,わが国の中小製造業が,いかなるタイプの取引統御機構を形成・選択しているか,それが経営成果に対して,いかなる影響を与えているかを実証分析することを目的とする.