新しい製品あるいは技術が社会体系の中でどのような速度で普及していくかについては,E.M. Rogersの研究がある.ここではその中の採用段階過程説,パーソナル・インフルエンスの重要性,採用率におよぼすイノベイションそのものの5特性などの概念をとりあげ,それにもとづいてイノベイション普及過程を表現するコンピューターモデルを作成した.
このモデルに適当な数値を与えてシミュレーション実験を行なったところ,いわゆる製品のライフ・サイクルのパターンに類似した採用者分布がえられた.モデル構成の過程の考察からこのパターンは,ロジスティック曲線のそれと基本的には同一の性質をもっていることがわかる.
現実のデータにこの考え方を適用していくためには,なお考慮されなければならない数多くの問題点があるが,新製品の市場への導入およびそれ以後のライフ・サイクルの各段階に対応して,最適のマーケティング・ミックスを論ずるための基礎として,ライフ・サイクル曲線の基本的特長は,ロジスティック曲線のもつそれであるという理解は,概念整理の上から有効であると思われる.
消費者の行動を個人行動の面からでもなく,また,市場という抽象の面からでもなく,財・サービスに密着した集団という面からとらえて,分析する方法を提案したい.
それは消費者集団を組織論の立場から観察し,分析し,モデル化するという理論的構成を試みたものである.したがって,モデル化にともなうパラメーターが重要な分析材料になる.
このことを消費者集団の情報処理システムの側面と消費者集団の構造の側面とについて考察を試みた.
H.A.サイモン教授は,その著“人間のモデル”において,雇傭契約は,労働の売買契約より,労使双方にとって望ましいことを証明している.この論文は,サイモンの所論を基礎にしながら,つぎの点を説明しようとするものである.
1.サイモンの論文における連続確率分布を離散的分布におきかえ,また,数値例を示して,理解を容易にしている.
2.人事に関する権限は,企業家が本来保有しているものではなく,雇傭契約によって,被傭者からあたえられるものである.したがって,従業員は,責任権限の階層組維を容認しなければならない.
3.組織均衡理論では,参加者の数を増大するほど望ましいが,責任権限組織の均衡理論では,参加者数を縮少するほど効率的であるという,相互に否定的な性質をもっている.
4.組織理論は,全体システムの行動理論としての組織均衡理論と部分システムの行動理論としての技術的組織および社会的組織の均衡理論を中心内容とする理論である.
コンフリクトとはどんなものか? 組織的コンフリクトという目に見えない要因が,どのようにして,組織機構といった明示的要素を変化させるのか.新らしい組織論の1つの骨組みに,コンフリクトを中間項として組織の動態を捉えようとする考え方がある.この考え方に立ってコンフリクトと機構の諸特性の変化との関連を細かく検討している.