本稿は,日本の経営を問題とする三つの視点を述べ,そのうち,日本の経営の経営力は何かという視点から,日本の経営の今日の問題点を序論的に考察する.環境適応,意思決定,リーダーシップのそれぞれの機能領域において,経営近代化と経営の伝統的性質との相剋統合を日本の経営は,いかに行なおうとしているか,その効果的な経営システムは何か.
経営の「日本的」特質を追求する試みは,すでに数多くみられる.それらに共通していえることは,暗黙のうちに,アメリカの経営との対比で,その特質が述べられていることである.また,必ずしも資料的裏付けのないままに,常識や印象にもとづいて議論されている場合が多かった.この小論は,イギリスの1企業における教育訓練の実際を紹介し,それとの比較で,わが国の企業における経営行動の特徴を明らかにしようとする.