成果主義賃金の導入に当たっては,企業戦略と成果指標との適合性が重要であり,高品質・研究開発重視企業では,職能志向の賃金決定が,業績志向の賃金決定より適合的だと考えられる.東京都内約500社の企業データを用いた分析によれば,この仮説は実証的にも妥当している.また,従業員の納得度や職場の社会的関係にも十分配慮すべきである.ただし,賃金決定要因と企業内賃金格差の間には直接的な関連は見られない.
成果主義的賃金制度が労働意欲を刺激するには,どのような条件整備が必要だろうか.成果主義が導入された職場でホワイトカラー非管理職の労働意欲が高まるには,能力開発の機会拡大が重要である.それは,性別,年齢,学歴,職種等の個人属性,規模,社員増減,業績等の企業属性の違いを超えてあてはまる.能力開発と並び,仕事の分担や役割の明確化も労働意欲を高め,これらは職場全体の個々の能力を活かす雰囲気も改善する.
成果主義は個人差の評価のあり方にその成否が委ねられている.成果主義における個人差は業績と顕在的な発揮能力に焦点があてられ,そこにコンピテンシーの概念と行動評定手法が適用されることが多い.本稿ではコンピテンシーの概念や行動評定手法の意義や課題だけでなく,伝統的な人事アセスメント技術についても蓄積された国内外の妥当性研究の成果を総括し,成果主義の本質的な課題と資質的な選抜評価のあり方を討論する.
業務などの基準から判断し,企画業務型裁量労働制を適用することが法的に可能である本社のホワイトカラー層を取り上げ,働き方の裁量性の程度を検討し,裁量労働制を適用するために解決すべき課題を明らかにする.この課題は,報酬管理の成果主義化が円滑に機能するための条件となる.分析に利用するデータは,本社に勤務するホワイトカラーの働き方を把握するために実施された質問紙調査に基づくものである.
210社の企業を対象とした質問紙調査によって,企業の成果 主義的報酬施策と業績との関係に関する戦略的人的資源管理論(SHRM)とりわけ「ハイ・インボルブメント」モデルの仮説を検討した.その結果「ハイ・インボルブメント」なHRMシステム(集団・組織ベースの成果主義的報酬施策を含む)をもつ企業の業績の優位性が一部確認され,成果主義的報酬施策が他のインボルブメントHRM施策と一貫した形で導入され た場合に効果をもたらすという可能性が示唆された.
情報化とその貢献の関係が捉えにくい原因を探るため,組織コミットメントの概念を導入する.分析の結果,情動的な組織コミットメントが高い人は,情報化と組織貢献度の正の関係が大きい.しかし,コミットメントが低いと,情報化が高いとかえって組織貢献度が低くなる傾向がみられる.情報化時代には 組織へのコミットメントが一層鍵となるという示唆が得られた.