近年の英防衛調達の活性化は著しい.エージェンシー化された防衛調達庁内に,装備品開発の機能横断的チームを全面展開し,契約企業を早くからチームメンバーとして参加させるなど,民間の製品開発やアウトソーシングの技法を積極的に応用している.さらに国防に関する抽象化されたケーパビリティーを「カストマー」とし,防衛調達庁(上流)と国防省(下流)間にも,サプライヤー=カストマー関係を制度化するなど,革新的なビジネスモデルを展開しつつある.この経験的証拠は,単に民間ベストプラクティスの政府事業への応用といった次元を超えて,組織間関係論や社会システム論に一定の含意をもたらす.
フォロン社とグリーンピース,マクドナルドと環境防衛基金,CERESの3つのケースから企業と環境NPOとのグリーン・アライアンスの発展過程を論じた.組織間協働モデルをもとに,企業と環境NPOが対等なパートナーとしてアライアンスを形成し社会的価値を発見し創造していく過程を区分した.さらにそれぞれの過程で,どのような問題が発生しどのように解決してきたかを論じた.
情報システム(IS)のアウトソーシングは,「請負的」から「戦略的」の度合いを高めつつある.本稿では,社会ISの形成に向けて,民間企業と自治体との比較の視点から,ISのアウトソーシングの背景は何か,民間企業と自治体におけるアウトソーシングの違いは何か,そしてインターネット時代におけるアウトソーシングがどのような方向性を持ちどのような課題を抱えているのかについて述べる.
今や他の企業の外部資源を利用する戦略提携は,企業の組織構造全体の本質的な特徴となりつつある,しかも,競争優位性がますます企業の内部資源だけではなく,戦略提携のタイプや提携関係の範囲に依存してきている.
本稿では,戦略提携のなかでも,とくに合弁に焦点をあて,いかに組織間関係を通じて新しい知識が学習されていくのかというプロセスを,非対称性という概念を鍵に,事例研究を通じて解明することを第一の狙いとしている.また,そのプロセスに合弁企業の組織能力がどのような影響を及ぼし,関係を進化させていくのかということを解明することを第二の狙いとしている.
最近,人的資源管理(HRM)のアウトソーシングが注目されている.本論文では,三菱商事人事部をケースとして取り上げ,人的資源管理のアウトソーシングのプロセスとその決定要因を取引コスト・パースペクティヴと資源ベース・パースペクティヴから検討した.戦略的人的資源管理(SHRM)では,アウトソーシングを実施する場合,コスト削減のようなオペレーショナルな要因のみならず,戦略的フォーカスや人的資源の価値連鎖,組織開発のような戦略的な要因もとても重要である.
アライアンスやアウトソーシングの重要性はますます高まっている.本稿では,1990年代以降の文献サーベイを行い,アライアンス論やアウトソーシング論の現状を把握し,今後の展開方向を明らかにすることを目的としている.特に経営戦略との関係を重視し,パースペクティブを明確にしたうえで,アライアンスやアウトソーシングを展開するための課題(形成,マネジメント,進化)について展望を行っている.
本研究は,学会など外部の職業集団に準拠し,所属集団へのコミットメントが低く,コスモポリタン的とされるプロフェッショナルを,多元的な組織・集団の中の個人という視点から分析するものである.本研究のアプローチは,産業組織の構造,専門分野,所属組織での自己の位置づけなど,それぞれの組織・集団での自己評価が,移動可能性の逓減,認知的不協和を引き起こし,組織準拠性に影響を与えるというものである.これらの現象を多峰性関数のローカル・マキシマムという概念を用いて説明を行う.
本論文の目的は,ドミナント・デザインとして製品アーキテクチャが確立した製品に,再びアーキテクチャ上の変化が起こる時に,既存資源が与える制約を分析した上で,既存企業がその制約を乗り越えて適応するメカニズムを分析することである.そのため,本論文では,特に企業内部資源の移動と再結合による,異質な資源の創造プロセスに注目して分析を行う.なお,本論文ではパソコン産業において,市場と技術の面で安定期に入ったデスクトップからラップトップへの製品変化を取り上げ,デスクトップの既存企業であるNECの対応を分析する.