研究方法論を因果的であるか,解釈学的であるかという二項対立図式で捉えるのは適切ではない.組織現象(あるいはより広く社会現象)は,因果的であると同時に解釈学的であり,その両者の視点をもって分析するところに興味深いモデル構築の契機がある.近年の日本企業が陥っている過剰分権化という現象がなぜ永続・悪化しているのかという問題を因果的でありかつ解釈学的に説明し,本稿の分析手続を定式化する.
本稿の目的は,市場戦略(マーケティング)の審級(妥当な判断の帰属点)に関する基礎的な検討を行なうことである.市場が戦略の審級としての地位を失う現代にあって,それを理解することの理論的意義は高い.環境に審級を求める議論と行為者の準拠枠に審級を求める議論を検討しつつ,絶対的な審級の困難,戦略固有の環境における開かれた合理性の概念の意義,そしてそこから導き出される理論的課題の在処を指摘する.
組織に適応を迫る環境,その強固な現実性は,組織が現実に直面する出来事や現象それ自体に備わっているのではない.環境は根本的に行為者の意味付与行為に依存しており,自然的態度によって自明視されている.意味という病は行動可能な状況を不断に要求し,物象化はそれを客観的なものに変える.そしてそうしたプロセスの根底には,常に背後期待があって,環境の現実性を維持している.
本稿は,「意味の組織論」としての組織シンボリズム論の論点と方法を,その主たる研究分野である組織文化論を中心に論究する.その際,機能主義的組織文化論と解釈主義的組織文化論のきわだった対照性,ないし鋭い対峙性を浮き彫りにする.
本稿では,ITに関するアウトソーシング,内部調達,並存型,という代替的な利用形態の可変費用削減効果を測定した.その結果,製造業では内部調達,アウトソーシング,非製造業ではアウトソーシングにコスト削減効果が確認された.しかし,並存型については費用削減効果は確認されなかった.したがって,組織能力の点では,短期的にはスタック・イン・ザ・ミドルの現象が確認されたのである.
本稿の目的は,技術に関連した経営学的な研究を進めるうえで,①何かを達成するための技術と,②その技術が達成したものを計測・評価するための技術,という二重性を持ったものとして技術を捉えるという視点を採用することで,より豊かな議論を展開できる可能性があることを示すことである.この目的のために,計測・評価技術の重要性に注目しながら,CMP 装置産業で観察された技術変化とそれに伴う企業の変遷について分析する.