多角化企業の業績が思わしくないといわれているが,電機産業の多角化戦略の業績を比較すると,コア事業を持っている多角化企業は比較的高い経営成果をあげていることがわかる.本論文では,コア事業が高い経営成果に結びつく理由として,企業内部の多様な人々の心理的エネルギーを動員することができる,事業間の複雑な相互依存関係からシナジーを実現することができる,コア事業にはトップの関与があるため事業部長では行うことのできない種類の意思決定を事業レベルで行うことができる.これらの分析をもとに,コア事業をもつ多角化戦略を実行するための方策について考える.
持続的企業価値創造の鍵は,自社の事業領域の稜線をいかに定めるかにかかっている.複合企業からスピンオフした企業の好業績もコア事業集中の意義を裏づけるし,逆に経営の多角化は,歴史的に見ても実績に乏しい.
コア事業を見極めるには戦略顧客と自社のコアスキル特定が重要であり,加えてアイデンティティの明確化が企業の求心力を増す.
コア事業からさらに周辺領域に拡大するにあたっては,わかりやすい戦略目標の下,商品・サービス,バリューチェーン,地域,顧客,市場のそれぞれの視点からフォーカスとスピードを軸に思い切った取り組みが必要である.
現在の日本企業は事業集中を進めているが,関連型多角化も行われている.組織構造は事業部制組織が一般的だが,職能別組織も依然として重要な地位を占めている.また事業部制組織も欧米のものとは異なり,分権化の程度は低く,日本独特の混合型も多く存在する.組織は戦略に従うという命題は支持されるが,組織構造には多様性も存在する.日本企業は環境の変化に対応して組織改革を行っており,その道筋は多様である.
韓国企業は多角化戦略を軸に企業成長を遂げてきたが,こうした成長戦略は経済危機を境にその優位性を失うこととなる.その戦略代案として台頭したのが業種専門化である.しかし,韓国企業が企業成長を持続化させていくためにはそうした特定分野への集中と同時に拡大という新たな戦略の調整が望まれる.
本稿は総合商社の多角化・総合経営の歴史的形成過程と 1990年代の変革を「商権」をキーワードとして考察する.専 門商社から総合商社への成長においては,同質的競争のもとで全方位的に商権多角化がはかられた.1990年代以降,商権の劣化に対して投資の増強を基調とする商権ビジネスの構造変化が生じ,投資に対するリスク・リターンの適切な管理を必要とするようになった.この結果,業績格差が拡大し,同質的競争は終焉しつつある.
R&D活動における自前主義には限界があり,企業は外部ナ レッジの探索,獲得,吸収,活用を図る必要がある.R&D成果向上には,それぞれの段階の一部だけで良い成果を得るのではなく,全ての段階でバランスの取れた成果を得ることが必要である.本論文では,最適な外部依存度,外部ナレッジの内容別のバランス,企業規模,個人の能力・モチベーションについて,日本の製薬・バイオ産業を対象とした実証分析を踏まえて考察する.