優れた技術や製品を開発できたとしても,競合企業に模倣され,持続的な業績に結びつけることが困難になっている.本稿では,模倣回避のメカニズムとして,特許などの法的・制度的な権利獲得と,組織能力の長年の積み重ねの2つがあり,持続的な業績のためには後者が特に重要であることを議論する.また,積み重ねる組織能力の内容として,技術者の学習および,ノウハウが蓄積された製造設備・実験機器,擦り合わせの組織ルーチンの3つが鍵を握ることがわかった.
本稿では,モノづくりのムダを改善することの重要性に着目し,インダストリアル・エンジニアリングにおける新たな分析・改善の方法として,「基本変換」を用いた方法を提示する.さらに,その方法が,間接作業の改善にも有効に応用できることを示す.その上で,組織において改善活動を進める際,基本変換の考え方が活動のマネジメントに結びつき,改善活動のマネジメントの指針として役立つことを明らかにしている.
本稿は,製造業のあり方を考えるためのひとつの視点を論じるものである.製品をそれ単独で完結したシステムとしてみるのではなく,より上位のシステムで革新を実現し,個別の製品はその部分としてとらえなおすという視点である.そのような革新をなしとげた過去のいくつかの事例をみながら,この視点の意味合いを考えてみたい.
プッシュ型からプル型生産へのシステム転換には,組織能力や管理システム(MCS)の抜本的再設計が避けて通れない.とりわけ管理会計を,①プロダクト系のコントロールをピリオド系よりも優先する枠組みとし,②発生主義に基づく会計的利益よりも現金収支差額(キャッシュフロー)を評価尺度として重視し,③伝統的原価計算に「時間軸の要素」を加味してコストを再定義することが必要である.
設計論に立脚する「開かれたものづくり」概念をベースに,アジアにおける日本企業の国際展開を分析する.組織能力,アーキテクチャ,現地の競争環境の間の動態的なフィットが,各企業の立地選択に事前・事後的に影響を与える,というフレームワークで,日本企業のアジア展開と立地戦略を分析し,アーキテクチャに基づく比較優位論を提示する.
企業再建の成否を分ける要因として,フォロワーの意識や行動の変化が挙げられる.本稿では,フェニックス電機の企業再建事例を通じて,リーダーとの相互作用から,フォロワーの意識が変化していくプロセスを考察した.その結果,企業再建プロセスにおいては,経営者がトップダウンで組織構造を変革することと,次世代経営者の育成を意識して幹部の能動的な態度を涵養することを両立するリーダーシップが有効であるという知見を得ることができた.
既存の技術革新研究では,技術転換期に既存企業が競争地位を落とす理由として,新規技術への移行に遅れることが指摘されており,新規技術への迅速な移行をいかに果たすかという問題が重要視されてきた.これに対し,本稿では,新規技術への迅速な移行は既存企業に必ずしも望ましい結果をもたらすわけではなく,むしろ競争地位の低下・喪失につながる場合があることを指摘する.