日本が格差社会に突入したことを,所得分配と貧困の現状から明らかにしている.格差には「機会」の格差と,「結果」の格差があることを明らかにした上で,「結果」の格差には価値判断が要求されると述べる.さらに,なぜ日本において格差が拡大し,貧困者の数が増加したかを分析した上で,望ましい政策について議論する.それらは企業における賃金支払い,雇用の方式,などを含めたものである.
市場メカニズムは経済的格差を拡大させるプロセスを内包している.したがって,市場メカニズムだけでは社会の中の二極化現象が起きやすい.その二極化現象がアメリカほど起きていない日本で,すでに格差についての議論がかなり注目を集めているのは,経済的格差への社会的許容度が日本ではアメリカなどよりもかなり小さいからだと思われる.
正社員と非正社員のそれぞれに含まれる雇用区分の現状を見ると,正社員・非正社員という2元的な枠組みでは説明できない実態が明らかになる.雇用区分の多元化が合理的であるためには,仕事内容やキャリア管理の実態に即して設定することに加え,それぞれの雇用区分に対応した処遇制度の整備が必要となる.そのためには,仕事内容やキャリア管理の実態に即して雇用区分間の処遇上の均衡を図り,処遇に関する納得性を高めることが不可欠となる.
本稿では,マーケティング論の視点から,特に消費行為に焦点を当てて格差の問題を考察する.消費行為は,格差を社会的に可視化することで階層の安定的な維持に寄与する.一方で,消費社会では消費行為のフラグメンテーションが進み,格差の社会的な不可視化が進む.しかし,それは格差が現実になくなるということを意味しない.むしろ,格差に対する議論の高まりの中で,見えない格差は不安を生み出し,格差を新たな形で作り出す契機ともなる.
本稿の目的は,規格普及の事例研究を通じて制度的圧力の生成と変容のメカニズムを明らかにすることである.組織による自律的かつ合理的な判断だけでは説明できない組織実践を説明するため,制度的圧力に注目したことが制度理論の特徴であった.本稿では制度的圧力と自律的な組織実践が相互に影響し合うことに注目し,自律的な組織実践によって生成された制度的圧力は時とともに変容し,規格普及に影響を与えることを議論する.
本稿では,デジタル化の進展により規模や複雑性が増大しているファームウェアの開発に注目し,デジタル複合機の事例を通じて,多様な機能を実現している一群のファームウェアのアーキテクチャとその開発組織における部門間調整のあり方が共に変化してきたことが観察された.それにより,製品アーキテクチャが選択される一連のプロセスと多機能化に適したアーキテクチャを開発する上で必要となる部門間調整のあり方が示唆された.