近年のリーダーシップ研究の動向を,影響力の構造,相互作用,リーダーシップの効果の観点からまとめた.次に,これらの研究と新しいリーダーシップ理論との関連性について整理し,新しい研究がリーダーシップ・プロセスの解明にもたらす成果について議論した.最後に今後の研究への課題と展望を試みた.
リーダーシップ現象の中核に,規範の贈与があることを指摘し,その上で,規範の贈与に対する言語的な反対贈与として「リーダーシップ」という言葉を位置づけた.では,いかなる規範の贈与に対して,「リーダーシップ」の反対贈与がなされるのかこの点に関して,筆者が長年携わってきた過疎地域活性化運動からいくつかの事例を紹介しつつ考察した.
リーダーシップの発揮において,フォロワーが果たす役割は大きい.フォロワーがついていくか,いかないかでその成否は決定する.近年,リーダーシップ研究において,フォロワーの存在意義は増している.本稿では,フォロワーの視点からこれまでのリーダーシップ研究を再検討し,フォロワーの語りに注目した事例研究の調査結果もふまえてフォロワーの視点によるリーダーシップ研究の可能性を探る.
近年,ミクロ及びマクロの諸理論・諸概念の統合化を図る新たな視点からのリーダーシップ研究が注目されつつある.本研究では,このメソ・アプローチと呼ばれるリーダーシップ研究について,既存の研究類型を踏まえた3つの基本的なメソ・モデル(行動的・文脈的・関係性アプローチ)を提起する.更に,これらモデルを応用した今後のメソ・リーダーシップ研究の理論的・方法論的課題について,2つの研究事例を通じて考察する.
リーダーシップ発達(育成)をより体系化し,かつ加速化するために,リーダーシップ・パイプラインのようなアイデアが提示されてきた.しかし,育成開始をさらに初期にまで遡って生涯発達学説に基礎づける試みが少ない.そのギャップを埋めるために,まず,これまでの育成に貢献する経験の調査を踏まえて,経営者にまでなるようなひとのキャリア初期の経験を概観する.つぎに,育成を発達的視点から捉えるために,E. H. エリクソンの漸成説を基に,各段階における発達課題と強みとリーダーシップ発達(育成)との関連を探る.このことが家庭,学校,企業などの組織における教育・人事制度に対してもつ意味合いを探る.
本稿は,将来の不確実性によってニーズの特定化が困難である場合の,技術開発と市場ニーズとの統合について論じたものである.具体的には,将来の不確実性によって先行技術開発段階でのニーズの特定化が困難である場合に,複数の異なる技術の並行開発によって,いわばリアル・オプション的に技術開発を行うことで不確実性リスクを低減する可能性を台湾奇美グループの液晶テレビ開発事例の検討を通じて示した.
本稿は,産業間の競争的相互作用に注目し,補完的産業からの影響を包含した技術蓄積メカニズムを分析している.具体的には,デジタルスチルカメラ産業での競争と相互作用しながらインクジェットプリンター産業で印字精度の同質的競争が展開され,産業全体でインクジェット技術が高精細化へと蓄積されていく流れが扱われる.補完的産業との相互作用にまで分析空間を広げて技術蓄積メカニズムを解明することの意義が示唆される.
変革型リーダーシップと研究開発チームの業績の関係を実証した.その結果,変革型リーダーシップは,チーム効力感を高めることでチーム業績に正の影響を及ぼす一方,チームのコンセンサス維持規範を高めることにより負の影響を及ぼす面もあることがわかった.最後に,先行研究と大きく違う結果が生じた理由,および,より効果的なリーダーシップについての考察が行われた.