多様性と成果の関係性,そこにおけるリーダーシップの影響過程は,曖昧で複雑である.そのため研究が少なく,いまだ実務の要請に応えきれていない.しかし,次の点で着実に研究が進んでいる.1)より精緻に現象を捉えるための方法論が洗練されている.2)多様性固有の局面を正確に捉え,それに対するリーダーシップの影響過程が探求されている.本稿では,個人,集団(チーム),組織レベルで,多様性と成果をつなぐリーダーシップの役割に関する既存研究を整理し,今後の研究課題を示す.
変化の激しいグローバル環境において,潜在能力の高いグローバル・リーダーの探索,育成,効果測定は,各国研究者にとって重要かつ緊急な研究課題である.本稿では,海外文献研究を通して,Ⅰ期:グローバル・リーダーに求められる行動特性や個人的特徴(1990~),Ⅱ期:グローバル・リーダーの育成方法(2005~),Ⅲ期:グローバル・リーダーシップの測定尺度効果検証(2009年~)3期の研究フェーズを概観し,今後の研究課題の展望を導き出す.
マインドフルネスは,多様性とリーダーシップにどう貢献できるのか,Google社で開発された研修について,文脈を含め分析・考察した.マインドフルネスは,他者に対しての,自分の心の自動操縦モードに気づかせ,明晰な認知→自己認識→反応柔軟性→自己統制を可能とする.さらに,コンパッションは,自他の境界のない一元論的意識にいざない,多様性に究極的に応える.これらは,仏教や日本文化と深くかかわり,大きな可能性を持つ.
本稿は,破綻企業の構造的慣性を生み出す組織内メカニズムを業種横断的な観点から解明することを目的とする.産業再生機構など公的な機関が支援対象とした複数の実質破綻企業を事例として取り上げ,それらの企業には,組織成員がそれぞれ合理的な行動をとりつつも,意図せざる結果として環境への適応不全が持続しその是正が困難となるメカニズムが駆動していることを明らかにする.
本研究では,薄型テレビ市場におけるLCDとPDPの競争を事例として,製品アーキテクチャーが内包する原理的な可能性や制約が開発戦略,市場競争に及ぼす影響について検討した.結果,それらは製品アーキテクチャーの型を決定する重要要因であると共に,開発戦略,市場競争に重大な影響を与えることが明らかとなった.原理的特徴は,短期的な影響は小さいが,長期的には市場競争を決する重大な要因となり得ることが示された.
本稿の目的は,日本の大企業の海外進出行動および多国籍性(海外子会社数と進出国数)が企業の寿命に与える影響を明らかにすることである.本稿の分析結果から,日本企業の海外進出行動と海外進出国数は必ずしも企業の寿命に有意な正の影響を及ぼすとは限らないことが示された.一方,海外子会社数が企業の寿命に有意な正の影響を与えるということが明らかになった.