多角化戦略において,内部投資に対する外部投資(M&A投資)の比率がどのように企業業績に影響するかを検証するために,傾向スコア・マッチング法によって環境因子を調整したデータセットを構築し,重回帰分析を行った.推定結果から,多角化度が高い場合,M&A投資比率はROICに統計的有意にプラス効果を示すが,多角化度が低い場合には,M&A投資比率は統計的有意にマイナス効果を示すことが明らかになった.
本研究は,製薬産業における産学共同研究成果の評価を目的として,特許の技術品質(被引用特許数)および開発プロセス品質(出願国数,特許登録)に対する発明形態・出願形態別の効果を回帰分析により検討した.その結果,技術品質は開発プロセス品質に対して強い正の効果を有している事,産学共同発明は技術品質に対して負の効果を有する事が明らかになった.一方で,対象とする疾患領域・技術タイプを選ぶことによって技術品質の高い成果を生み出す可能性がある事も明らかとなった.
本稿では,KBV(knowledge-based view)の視点から,コンセンサス標準をめぐる企業行動を明らかにする.車載ソフトウェアの標準アーキテクチャ「AUTOSAR」の事例を分析した結果,標準化コンソーシアムへ参与する企業ほど標準アーキテクチャを導入する一方,標準化対象領域のコンポーネント知識が多い企業ほど標準アーキテクチャを導入しない傾向が示された.これを踏まえて,コンセンサス標準をめぐる企業行動を,推進者,フリーライダー,監視者,安住者に4分類した.
本研究の目的は,リスクを伴う意思決定に際して,社会的勢力感がいかなる影響を及ぼすのかを検討することである.質問紙を用いた場面想定法実験の結果から,次の2つの知見が明らかになった.第1に,勢力感の高い個人はリスク愛好的な選択を行いやすくなった.第2に,勢力感の低い個人は,リスクに対して単純に回避的な反応を示すというよりはむしろ中程度のリスクを好む傾向を強めた.
本研究では,従来注目されなかったアイデンティティ志向性と内的及び外的環境ダイナミズムとの相互作用に着目し,マルチレベル分析による態度形成のメカニズムの解明を行う.実証研究の結果からは,関係志向性と集団志向性の影響が確認され,さらに,内的及び外的環境ダイナミズムが個人・関係・集団の各志向性に対して異なる調整効果を及ぼしていることが明らかになった.