ヒトが地球上でこれほどまでに繁栄するに至った理由の一つは,ヒトが高い社会性を持ち協力を達成してきたからだと考えられている.ではヒトを一つの生物種と捉えた時,協力の進化を促した要因とは何だったのだろうか? そして他の生物種との違いは何だったのだろうか? 本稿では前半で生物一般における協力の姿を概説し,後半では人類史を振り返ることでヒトの協力の進化的起源について現段階で知られていることを解説したい.
組織設計は経営学における中心的なトピックである一方,従業員の協力・協調行動に組織設計が果たす役割に関して,我々の知識は未だ限定的である.本稿では,集団行動の問題の代表例である調整問題と協力問題に注目し,両問題の構造と組織設計の関連を扱ったNakama & Kamijo(2019)について紹介する.
多くの地域で,共有資源保全のために,コミュニティ内における自発的な保全行動が促される組織作りが重要視されている.本論文では,共有資源管理問題に対して,これまでの理論的な展開を示すとともに,近年の協力的行動や共有資源利用に関するラボラトリー実験,及び開発途上国を中心とするフィールド実験の成果から,いかに人々の協力的行動を促し,共有資源問題の解決や緩和を図るか議論する.
社会心理学及びその周辺領域において,実験ゲームを通して人間の協力行動のメカニズムを検討する実証研究が盛んに行われている.本稿では代表的な実験ゲーム研究を概観し,協力行動の重要な基盤として知られている“互恵性”の役割について紹介する.また,人間の大規模な協力社会を支える仕組みとして理解されている制裁制度の機能についても紹介し,組織管理の文脈における応用可能性について議論する.
本論文の目的は,個人の自発的なメンタリング行動に焦点を当て,その背後にある心理メカニズムを,状況的要因から理論的に検討することである.個人のメンタリング行動を組織がマネジメントする手段として多くの企業で採用されているメンター制度は,様々な問題をもたらすことが明らかになっている.ここでは,状況的要因の中でも仕事の設計に着目し,メンタリング行動,そして向社会的モチベーションとの関係を検討する.
本稿では,大企業のBOP事業創造プロセスを解明する.事例分析の結果,ポジティブなマインドセットに基づいて,環境変化に合わせた正当化行動を駆使するコーポレート・ソーシャル・アントレナーシップ(corporate social entrepreneur‑ ship;CSE)の重要性を明らかにした.また大企業でCSEを発揮させる要件としてSR部の機能再考,人的マネジメント,組織のミッションおよび寛容度について論じている.