本論文では,日本企業の従業員を対象として,組織内コミュニケーションに影響を及ぼすオフィス空間の特徴の解明を試みた.分析の結果,⑴対象全体でみると「オフィス空間の物理的特徴」単独では「コミュニケーションの取りやすさ」に影響を与えないが,オフィス使用歴の短い者のみには影響を与えること,⑵「オフィスの社会的環境」は,日常業務や個人の問題解決に関するコミュニケーションを抑制させることを明らかにした.
本研究ではポジティブなコミュニケーションとしての感謝に注目し,感謝の経験が職場で共有される「集合的感謝」が従業員の情緒的コミットメントに及ぼす効果と,職場の性別ダイバーシティによる調整効果について,企業調査に基づき検討した.階層線形モデリングの結果,個人レベルの感謝に加えて集合的感謝も情緒的コミットメントを促すことが示された.その効果は性別ダイバーシティの高い職場でより顕著だった.
ワーク・エンゲイジメント(WE)は良好な効果についての既存研究が多いが,本研究は,共働き従業員に与える正負の効果と調整要因に着目した.残業時間を統制した回帰分析の結果,活力および熱意は家庭時間の圧搾(FTS)を低下させ,没頭はFTSを高めた.WEの正負の効果に性差は見られなかった.家族関係の質が高いと,活力および熱意がFTSにもたらす良好な効果を強めた.また,家族関係の質は没頭の悪影響を緩和した.
新しい社会サービスの定着は難しい.本稿は,介護組織を対象とした認知症予防・改善サービス「学習療法」の定着事例を通じて,顧客組織が自発的に形成した凝集型のネットワーク構造を持つ組織セットに埋め込まれている場合,学習療法の定着率が高まることを生存時間解析によって検討した.凝集型では,顧客組織が感情的信頼をもとに知識を共有してサービスの品質改善や課題解決に取り組むため,定着しやすいことが推測 できる.
本研究の目的は,オンライン上での企業に対する顧客の自発的な貢献を促進するために,企業がその貢献に対してどのように反応すべきか明らかにすることである.既存研究は個別顧客と企業の二者関係に注目し,報酬による貢献意欲向上を議論していた.本研究は,企業と顧客,他の顧客の三者間関係に議論を拡張し,個別顧客への報酬支払いが他の顧客に影響を与える可能性について,組織支援理論・公正理論を踏まえて議論す る.