本稿は,計量経営学の進展を狙いとし,その要素技術になるデータサイエンスの基本事項を紹介することを目的とする.本稿では,まずデータサイエンスの入力となる「データ」の特性を述べ,「モデル化に対する基本姿勢」を紹介したうえで,主要なツールとなる「統計モデル」と「機械学習モデル」の概要を説明する.また,経営学でも有効活用しうる「ベイズモデル(統計モデルの一種)」の解析例も併せて紹介する.
近年,製品に関する評価コメントやレビューなどの大量の自然言語データを,マーケティング戦略や製品の改善・開発に活かすことが期待されている.本研究はグッドデザイン賞を2003年から2016年に受賞したデザインに焦点を当て,審査結果で得られる自然言語データを用いて,デザイン・アイデンティティとデザイン・イメージの関係性を検証した.その結果,アイデンティティとイメージは完全に一致せず,両者の乖離は時代と共に変動していることが示唆された.
本研究ではコミュニケーションプラットフォームアプリの製品段階ごとの戦略を検討した.Latent Dirichlet Allocationの併用状態を明らかにしたうえで,機能や用途のような属性も踏まえてアプリを整理し,同じバスケット内の補完関係を精緻化して議論を行った.結果として覇権アプリでは機能的・性質的な補完,成熟・成長アプリでは用途的補完に加えて成熟に至る過程における関係するアプリの切り替えの可能性が示された.
本研究の目的は,起業家がコミュニティのつながりを通してスタートアップを成長させることを明らかにすることである.つながりと成長の因果関係の実証には,勾配ブースティングによって計算された一般化傾向スコアで重み付けした逆確率重み付け法を用いた.本研究の成果は,起業家コミュニティ支援政策に貢献するものと考える.
本稿では,経営学研究にデータサイエンスを取り入れる観点から,経営学者に馴染み深い回帰分析を紹介する.まず,回帰分析の3つの目的を説明しつつ,回帰モデルで因果効果を特定する変数選択に有用なバックドア基準を説明した.さらに,効果が第3 変数や個人特性で変化するモデルとして,交互作用モデルやマルチレベルモデル/階層ベイズモデルを紹介した.最後に,最新の回帰モデルの手法として機械学習を応用した経営学研究や因果効果の推定について紹介を行った.
本稿は,マッチング・プラットフォームにおいて,PFの社会的存在感がどのようにしてPF の信頼を生み出し競争優位の実現につながるのかを明らかにする.求貨求車におけるトランコムの事例分析から,「人」の介在が信頼をもたらすメカニズムとして,「曖昧さの許容」,「心理的安心感の創出」,「変更への対応」,「取引条件の擦り合わせ」の4つがあることを示し、信頼の正のフィードバックループの存在を明らかにした.