筆者らの研究グループは,日本企業の事業組織を分析対象として,「組織の〈重さ〉」を中核概念とする質問票調査を, 2004年度から約15年間にわたり,隔年で実施してきた.本稿では,調査デザインを中心にこの研究の実施方法を示した上で,分析から明らかになった主要な論点を検討する.
本稿は,組織学会の学術企画として実施した,日本企業の実態調査「組織調査2020」の結果を概観しつつ,その調査課題の1つである「日本企業内の個人の状態と組織成果との関係」について,分析結果を報告する.39社700名のデータを用いた分析から,一般的にイノベーションにポジティブな影響を与えるとされる組織状態と,イノベーティブな個人状態とはリンクしており,それらが組織的な成果につながることが示唆された.
本稿では,「組織調査2020」で得られたマルチレベルデータ(35社680名)を用いて,マネジャーの社会関係資本,自己効力感が彼らの探索活動に及ぼす影響を検証する.さらに,マネジャーの探索活動に対する自己効力感とアドホクラシーの交互作用効果についても検討する.分析の結果,自己効力感と社会関係資本が探索活動を促進し,アドホクラシーは,自己効力感が探索活動に与える影響を増幅させることが明らかになった.
日本企業や事業所を対象にした総合的質問票調査として, JP‑MOPSの概要と研究成果を紹介する.JP‑MOPSとは,経済学でマネジメントの役割が注目され始めた時期に実施されたマネジメントや組織におけるプラクティスに関する質問票調査である.JP‑MOPSのデータからマネジメントの質を数値化し,マネジメントの質の決定要因,マネジメントと生産性の関係,マネジメントと長時間労働の関係などが明らかになった.
本稿は,筆者が行ってきた日本企業に対するパネル調査「経済政策と企業経営に関するアンケート調査」の概要を解説するとともに,そのデータを利用した分析例を紹介する.政府統計のミクロデータと独自のサーベイをリンクさせることにより,日本企業の構造や行動,それらの時系列での変化について様々な実証研究が可能になる.
本研究は,業務プロセスの標準化とチーム体制の整備を行った営業組織を対象とした事例研究により,リーダーの行動と心理的安全性の関係をチームの特徴がどのように調整するかを明らかにする.分析の結果,チームにおける目標の相互依存性,役割の分担と明確性を高めることで,プロセスを共有するための言語・規範が生じ,リーダーのコーチング行動が心理的安全性に繋がることが示唆された.
アントレプレナーのストーリーテリングの影響力に関する研究は,今世紀に入って活発化してきた比較的新しい研究領域であり,先行研究でも,その影響力のメカニズムは十分に検証されていない.日本のIPO市場のデータを使った本研究の分 析結果は,アントレプレナーのストーリーテリングによって伝えられる,特にベンチャーのアイデンティティを構築する効果が,外部からの資源獲得に影響を及ぼしている可能性を示唆している.
本研究では,革新指向性の相対的知覚に基づき,創造的逸脱を導く心理的・関係的要因がどのように異なるかを質問紙調査により検証した.その結果,職場革新知覚群では,情緒的OCが高く,継続的OCが低く,チーム学習が活発であるほど,創造的逸脱行動が生起していた(忠誠的メカニズム).一方,自己革新知覚群では,情緒的OCに加え,TMXの高さと職務不満足により創造的逸脱が導かれていた(反抗的メカニズム).