これまで事業ポートフォリオ・マネジメント(BPM)は,収益性重視と成長性重視を繰り返してきた.日本企業も,平成期の前半はコングロマリット・ディスカウントに陥り,事業の選択と集中による収益性の回復を目指していたが,構造改革を成し遂げた企業は,平成期後半では収益性と成長性のバランスを重視し始めたように見える.多角化を通じた経営能力学習の可能性を考えると,今後の日本企業には,学習のためにより成長を重視したBPMが期待される.
内部資本市場とは,多角化企業が事業間で投資やオペレーションのための資本(資金)を配分する組織的メカニズムである.本稿はこのトピックに関わる主な論点を整理した上で,組織が内部資本市場の働きに及ぼす影響について,過去の研究が何を論じ,明らかにしてきたのかを紹介する.また,日本企業を対象として,今後いかなる研究機会が存在しているかを考察する.
多角化企業の競争優位にとって重要な「範囲の経済性」については,同一時点と異時点間という異なる種類の経済性が指摘されている.後者に関しては,資源の再配置が注目を集めている.本研究は,日本の半導体関連特許を用いて発明者の動向を追跡調査した.発明者による資源の再配置には組織の移動が関わっており,2000年代以降に半導体企業が事業の縮小や撤退にともなって内部の発明者を再配置した形跡は見られなかった.
企業不祥事が株価パフォーマンスに与える影響をイベント・スタディで検証した結果,①不祥事は負の影響があること,②事故的不祥事の負の影響は限定的だが,意図的不祥事の負の影響が顕著であること,③産地偽装やデータ改竄の負の影響が最も大きいこと,④子会社の不祥事は親会社へ負の波及効果をもつこと,⑤良いガバナンスは,負の影響を緩和する可能性もあるが,より悪い結果をもたらす可能性が高いこと,などが判明した.
筆者自身が絶望的状況から回復するまでのプロセスを分析対象として,レジリエンス,意思決定論,システム思考の観点からオートエスノグラフィーの分析を行った.分析の結果,「鮮明さ」と「類似性」の高い情報に接触することで希望が見出せる可能性,および,システム思考のレバレッジを効かせれば急速に回復できる可能性が示された.絶望や悲しみなどの問題に対して,今後は経営学分野の知見を活かした研究も必要と考えられる.
先行研究では主に,社外取締役の不正抑制への貢献効果が議論されてきたが,社内取締役が多数派で独立社外取締役が少数派である日本企業ではむしろ,社内取締役の不正抑制効果を検証すべきである.2015-2020年の東証一部上場企業約9,000社についてパネルデータ分析を行った結果,取締役会に占める生え抜きの社内取締役比率と社内取締役の任期の長 さが不正リスクを高め,社外取締役と親会社出身社内取締役は不正抑制に貢献していないことが確認された.
本稿ではインクルージョン風土が心理的安全性を媒介して他者支援行動を促進することを明らかにするために,Conservation of Resources理論を援用して仮説を提示し検証した.加えて,心理的安全性の他者支援行動への影響および心理的安全性の媒介効果における資源の利用可能性の調整効果を検証した.分析の結果,仮説はすべて支持され,心理的安全性の媒介効果および資源の利用可能性の調整媒介効果が確認された.