本稿の目的は,価値評価理論の参照理論とされてきた社会物質性概念について,理論的アップデートを行うことにある.様々なメタ理論を援用しながら続いた論争が共通して有する方法論的課題を整理するとともに,近年再注目されるアフォーダンスの検討を通じて,価値評価研究への接続性を示す.
本研究の目的は,価値評価研究が中核に据える装置概念をメタ理論に遡り整理し,装置概念の含意を明らかにした上で,様々な装置により産出される科学技術イノベーションを明らかにすることである.本研究では,放射光施設をはじめとした様々な物理学の実験装置に産出され,多面的に生み出されていく科学技術イノベーションの実践を分析の俎上に上げる.
本研究は,NFTのC2Cマーケットプレイスである「Xマーケットプレイス(仮称)」の事業構築過程を,探索的資産化の視座から再構成したものである.「Xマーケットプレイス」の事業推進チームへのインタビュー調査に基づき,事業構築過程において制度・社会的アクターおよび物質的アクターが編成する社会技術的集合体と資産化の様相を段階的に整理することで,価値創造が変容するダイナミズムを描いている.
2024年に発生した自動車業界の認証不正事案を対象として,価値づけ研究の視点から調査と分析を行った.その結果,国際基準を参照した保安基準(日本基準)は基準としては機能したものの,運用において課題があることが判明した.この運用面での課題が認証不正を誘発したことから,本稿では認証制度のアイロニカルな側面に着目しつつ,自動車業界の認証不正を価値毀損のメカニズムとして記述した.
本研究は健康経営の事例を通じ,フィールドレベルのロジックが組織や個人に与える影響を制度ロジックの複合モデルから検討した.組織は多様なステークホルダーが要請する相克的な価値を管理し,存続を図る過程で不可避なコンフリクトに直面する.社会的正統性の獲得に向け時代の制度的合理性への準拠が求められる中,組織や個人が複数の価値評価基準の併存に対応し,戦略的な管理実践を展開することが明らかになった.
バブル崩壊以降の「失われた30年」の間,日経連・経団連が主導する形で,終身雇用を前提とした雇用制度は大きく変容してきた.従来の終身雇用慣行を大きく変えた新たな雇用制度は,日経連・経団連によってどのように正当化されてきたのか.本論文では,多様な価値評価基準を前提にした正当化を捉えるプラグマティック社会学のシテの枠組みに基づいて,日経連・経団連の報告書における雇用制度の正当化について分析する.
本研究は,近代社会において長らく自明視されてきた計算可能性を,資本主義的支配様式の基盤であると同時に,資本主義内部から社会的批判を可能にする条件として再検討するものである.批判のプラグマティック社会学を基盤としつつ,デリダの正義論およびバタイユの至高性をめぐる議論を参照することで,計算可能性をめぐる問題がラディカル構造主義の批判的視座といかに交差するのかを明らかにする.そのうえで,現代社会におけるラディカルな批判の理論的可能性を探究する.
本稿は,Webサービスやモバイルアプリで従来有用性が 示されてきた機能性・信頼性・パーソナライズ性に加えて,製品デザイン研究で重要視されてきたデザイン新規性の概念を導入し,各要素のサービス利用行動への影響を分析した.分析結果から,デザイン新規性は,利用初期段階で負の影響,継続利用段階では正の影響を与えるというように,利用段階で異なる影響をもたらすことが明らかとなった.