これから4回にわたって連載予定の本稿は,昭和47年12月の組織学会年次大会における,イリノイ大学心理学部準教授(当時,慶應義塾大学訪問教授)G.B.グレインの講演に端を発している.彼の“Role Making Processes in Complex Organizations”と題したそれは,組織行動を理解するにあたっての,伝統的な研究戦略と,最近,一つの統合科学としてめざましい発展をとげつつある組織心理学からの新しいパースペクティブとを比較対照しつつ,アメリカでの関連研究および現在日本で進行中の研究プロジェクトとを紹介したものであった.
本稿の当初の課題は,以上のグレイン講演の骨子を要約・執筆することであったが,彼の議論の背後にある,組織行動についての諸理論および現在わが国で進行中の役割獲得過程の実証的研究の二つについて深く言及することなしには,その作業はあまり実りあるものにはならないだろうと思われた.このことを組織科学編集部に伝えたところ,幸いにも「4回連載」という御配慮をいただき,その希望がかなえられることになった.ここに,編集部の御理解に対し感謝の意を表します.