編集委員会は,経営参加を特集するに当り,この問題の包括的な展望を得るための論文を,多年にわたりこの問題を研究してこられた筆者に依頼した.筆者によれば,経営参加は未来の社会システムの基礎となるべき社会的対話の一つの形である.しかも筆者は,それが単に経営参加にとどまらず,労働者の政策参加を目指して,地に足がついた実践的ステップを踏み出すべき時期を迎えていると論じている.(編集委員)
労働組合の経営参加を全体的に理解するためには,労使交渉システムの現状を確認しておくことが重要であろう.本稿で筆者は,比較的長い歴史を有する西ドイツの経営参加制度を理解するための前提として,そこでの労使交渉システムを企業外,企業内にわけて図解している.筆者の数年にわたる現地での研究を基礎にしたこの論文は,わが国での経営参加の具体的戦略を考祭するうえで,示唆に富んでいる.(編集委員)
ユーゴスラヴィアの社会主義は,国家的統制によるソ連のそれとは異なって,労働者自主管理を特徴としており,われわれにとっても労働者の経営参加を積極的に展開させた経済社会の理念型のひとつとしての意味をもっている.この論文において筆者は,ユーゴ型経済社会の理念を,所有制,経営管理方式,分配関係,社会的分業の編成様式,経済社会における決定主体という五つの視座から,解明している.(編集委員)
岩田論文につづいて,この論文ではユーゴの労働者自主管理の経済社会の中で生じている問題点を論じている.それはまず,マクロ的にはインフレとその原因としての寡占があり,また産業問の貸金格差がある.さらにミクロ的には,テクノクラートの支配と経営能率の低下が指摘されている.筆者は,ユーゴの現状においてこれらの問題点を考察し,その克服への道として,市場競争の意義を強調している.(編集委員)
編集委員会は,この特集のために,諸外国での経営参加の実情を確認しておくことが必要と考えて,久野氏にそれについての紹介をかねた論文を依頼した.読者は,この論文によって,諸外国の実情を概観できるとともに,経営参加のもつ問題点を認識し,また日本の実情と対比する手掛りを得られるであろう.(編集委員)
本号で経営参加を特集するに当って,個々の筆者による論文を併列するのみでなく,これまでの基本的な文献の解題によって,この問題についての議論の流れを明らかにすることが必要であると考え,編集委員会は原田・石井両氏にその作業を依頼した.両氏によるこの文献解題では,コールや尾高邦雄氏の古典的な参加論から,今日までの主要な文献が,それぞれの視点によって分類され,簡潔に解説されている.両氏の努力は,この問題への入門の手掛りとしての価値を,今後しばらくの間は,失わないであろう.(編集委員)