組織のヘルシャフト原理はM.ウェーバーの『支配の社会学』いらい一つの通説となっている.問題は今日それをいかに乗り超えるかにある.このテーマは,これまでの経済学の理論の枠とその延長上にある工業世界の論理をいかに乗り超えるかという問題意識にもつながる.筆者は,ヨーロッパ中世史の権威O.ブルンナーの示唆にしたがいつつ,転換する経済学がはらむ方法上のこの難問に解答をあたえようとする.
経済体制は.資源配分の調整メカニズムにかんしてどのような組織編成を行なうかによって特徴づけられる.代表的な組織原理としては,一方に意思決定にかんする集権的管理組織を前提にした計画型メカニズムがあり.他方に情報の分散構造という制約条件の下で自律的交換というゆるやかな組織を前提にした分権的市場メカニズムがある.経済体制の規範的組織論は.種々の経済環境において,一定の価値判断に基づいて目標が設定されるときに,どのような組織手段が適切であるかという組織設計の論理を明らかにする.
企業組織の拡大と市場機能とはどのような相互依存関係にあるのか.また,企業組織と産業組織とはどのようにかかわり合っているのか.これらの基本問題について,本論文は原理的な考察を加え,本特集が解明しようとする組織と経済システムとを結ぶさまざまな連結点を浮き彫りしようとするものである.
経済組織の分析と設計について科学的にとりあつかうアプローチとして,経済サイバネティクスがある.経済サイバネティクスは,情報,制御,およびシステムの概念を使って経済過程の構造分析をすすめる考え方である.いわゆる経済体制のような国民経済的な組織設計から,地域経済のシステム設計,またミクロ的な経済システムの分析にも利用され得るダイナミックなアプローチである.
現代の急激な技術変化のインパクトは,経済システム内部の亀裂を拡大してゆくようなかたちで作用しているように思われる.サブシステム相互間に生じた亀裂の性質を明らかにし,その打開の方向を単純化したモデルで明らかにしようとした.同時に,こうした方向に向かっての今後の議論のための共通の言語の一つのあり方として,コルナイの経済システム理論の概念的枠組を簡単に紹介した.
組織は人・仕事・組織形態の三要素が調和的である場合には安定均衡を保つが,技術・所得・イデオロギーなどの外生変数が変ると人・仕事がそれによって変化し,均衡が崩れる.均衡を再び回復するためには,組織形態の変更が必要となる.この理論モデルを企業組織の過去の歴史に当てはめると同時に,その延長としての将来の組織形態のあるべき姿を予測した.