統計的エネルギー解析(SEA)法において,実験的なパラメータ同定手法として広く用いられているパワー注入法は,構造物の振動計測点数が同定結果に影響する。しかし,計測点数の決定方法には具体的な指針が存在しない。更に,構造物の一部分を変更する場合であっても,構造物全体系で損失係数を再度同定する必要があり,実用性に欠ける。そこで本研究では,計測点数の解析結果への影響検証を行った。また,構造変更の一例として,構造物全体系における制振材貼付時の内部損失係数を,貼り付け要素単体の実験結果から求めた。以上により,計測点数の決定方法に関する指針を示すと共に,内部損失係数を再同定する工程を省略可能とした。
現状,公害振動の予測は加振源ごとに検討されてきた。主な方法としては,地盤を半無限均質地盤と仮定し,Bornitzの式を用いて,加振源近傍地盤と伝搬経路の地盤測点において測定した振動レベルから,距離減衰特性を重回帰分析し,家屋近傍地盤の振動レベルを求める。これに家屋における振動増幅として一律5 dBを加えて,家屋内の振動の大きさを予測する。しかし,加振源近傍の地盤振動の周波数特性は伝搬経路,家屋内において変化することや,地盤振動が単調に距離減衰しないことなどが知られている。本論文では,加振源から伝搬過程における周波数特性の重要性を指摘しながら,振動数を考慮した家屋内の振動予測方法について考察した。
道路交通騒音の等価騒音レベル(LAeq)を計算で予測または推計する場合には,交通量および自動車走行のA特性音響パワーレベル(LWA)のデータが必要になる。このうちLWAについて国土交通省では1999年の文献値を使用することとしているが,10年以上経過したので継続して使用することの妥当性を確認することとした。2010年に現場測定したLWAは文献値とほぼ同じであり,文献値によるLAeqの計算値も正確であった。道路交通騒音の計算で1999年の文献に記載されたLWAを継続して使用することは妥当である。