屋外での音の伝搬に及ぼす地表面と風との複合効果について検討するため,滑走路とその周囲に広がる草地上で伝搬実験を実施した。この実験では,2台のトランペットスピーカを音源に用いて,それらから広帯域ノイズの断続音を交互に放射し,滑走路と草地上における水平距離300 mまでの伝搬特性を測定した。伝搬音に対する風の影響は地表面性状によって異なり,無風時に対する順風時の音圧レベルの上昇は吸音性地表面で大きくなるのに対して,逆風によるレベル低下は反射性地表面で顕著であることなどを確認した。さらに,実測値と理論計算値とを比較した結果から,現地で測定した音響インピーダンスを用いた実用的な計算法の有効性も明らかにした。
鉄道高架橋の既設防音壁上に設置し,その高さを大幅に嵩上げすることで騒音低減性能を向上させる新しい嵩上げ防音工の開発を行った。これは,列車の運行に支障しない自然風の条件においては所定の騒音低減性能を有し,構造物の設計強度以上の風荷重が作用する強風時には,その負荷を低減する構造を有している。この防音工は支持枠と開閉可能な防音パネルで構成され,防音パネルには遮音板として厚さ8 mmのポリカーボネートを用いている。本研究では,防音パネルが閉じている時の遮音性能,振動特性および風荷重作用時の防音パネルの動作について検証した。その結果,防音パネルが閉じた状態では十分な遮音性能を有し,強風による風荷重によって防音パネルが開き,風荷重の負荷を十分低減できることを確認した。