本文は, 音響ゆらぎを音環境の評価・制御に適用するための基礎として重要な, 音響ゆらぎの“物理的評価”及び“人への影響評価”の2つの側面に関する検討結果を報告したものである。
本文の前半部では, 音響ゆらぎの計測・分析上の諸課題を取り上げ, (1)振幅ゆらぎを代表する物理量, (2)ゆらぎ係数導出のための回帰分析手法, (3)ゆらぎ係数導出のための回帰分析周波数範囲, (4)ゆらぎ変動の量的評価指標, 等に関する筆者らによる提案を, その背景・理由とともに報告している。
本文の後半部では, 環境音としてその適用が期待されている“ゆらぎ雑音”をとりあげ, ゆらぎ雑音の生理・心理的影響に関する在来知見を整理するとともに, ノイズマスキングシステムに関する実験を通じて, “ゆらぎ雑音”の環境音としての可能性を探った。これらの検討を通じて,“1/f型ゆらぎ雑音”は, その適用に向けて印象評価の面で改良の余地を残すが, 環境制御手段として高い可能性をもつことが確認された。
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