島根県立中央病院医学雑誌
Online ISSN : 2435-0710
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最新号
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表紙 目次
巻頭言
総説
原著
  • 桑原 正樹, 楠 正勝, 山﨑 啓一, 金井 克樹, 樋口 大, 森 浩一, 石田 亮介, 北野 忠志, 山森 祐治
    2025 年 49 巻 p. 9-12
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本紅斑熱は治療が遅れると重症化することが知られ,死亡する場合もある.今回我々は日本紅斑熱の重症化因子を検討した.対象は2012年から2022年までに当院で治療した18歳以上の日本紅斑熱症例45例である.ショック,意識障害,腎障害のいずれかを満たす場合を重症と定義した.年齢,性別,発症から抗菌薬開始までの日数(6日以上または5日以内),基礎疾患(糖尿病,高血圧症,脂質異常症,心房細動)の有無,治療開始時の血液検査値(Alb,AST,ALT,LDH,Cr,CK,Na,CRP,白血球数,血小板数),SOFA score,入院日数について分析した.重症群9例は非重症群36例と比較し,発症から抗菌薬開始までの日数が6日以上,糖尿病,Alb・血小板数の低値,AST・LDH・Cr・CRP・SOFA scoreの高値,長期の入院期間と関連していた.本研究の結果は,抗菌薬の遅れが日本紅斑熱の重症化と関連するという過去の知見と一致していた.また糖尿病を有することが重症化に関連する可能性として示唆された.
  • 中村 彩芳, 井上 真一, 松本 紘子, 貝田 亘
    2025 年 49 巻 p. 13-20
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    頭部有毛部の皮膚欠損創の治療は欠損の大きさによって縫縮, 植皮術, 局所皮弁術, 遊離皮弁術などが選択される. 植皮術, 遊離皮弁術では移植部の質感の違いや禿頭など整容面でのデメリットが大きいため可能な限り縫縮や有毛部からの局所皮弁を適応したいが, 被覆できる欠損の大きさに限りがある. 1980年代に入り術中にエキスパンダーを用いて皮膚を短時間で伸展させる術中組織拡張法が提唱された. 簡便な方法であり文献上4-4.5㎝以下の欠損であれば植皮や皮膚の追加切開を行わずに創部を一期的に閉鎖することができるとされる. 一方その伸展機序については明らかとなっておらず, 後戻りの懸念や虚血による皮膚壊死や禿頭などの合併症が報告されている。最近ではエキスパンダーとしてfoley catheterを利用する報告が散見される. 今回我々は8例の頭部皮膚欠損の症例に対してfoley catheterによる術中組織拡張法を行った. 文献上報告される適応よりも大きな創に対しても皮弁との組み合わせによって閉鎖可能であった. 患者背景や原因, 手術内容, 経過, 合併症の有無について文献的考察を加えて報告する.
  • 木村 光宏
    2025 年 49 巻 p. 21-27
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    Endscopic modified medial maxillectomy(EMMM)は内視鏡的に上顎洞内へ直接アプローチする方法で,鼻腔形態を保ちつつ広いワーキングスペースを確保できる手術方法である.また,犬歯窩のアプローチと比べると,口唇・歯・頬部の痛み・しびれなどの後遺症の発生率が低い.当科で施行したEMMMについて検討したので報告する.当科で行ったEMMM症例は26例であった.男性18例,女性8例,平均年齢は56.5歳(22-76歳).症例内訳は,内反性乳頭腫が最も多く9例,術後性上顎嚢胞8例,後鼻孔ポリープ3例,歯根嚢胞2例,埋没智歯2例,上顎洞血瘤腫1例,上顎洞真菌症1例であった.そのうち,術後の再発は3例,頬部しびれや疼痛を訴える症例が3例認めた.
症例報告
  • 飛田 正敏, 松﨑 雅彦, 野﨑 健治, 井上 尊人, 田中 孝明, 江角 直人
    2025 年 49 巻 p. 29-34
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    脛骨骨幹部開放骨折に対して髄内釘で手術し16年後に慢性化膿性骨髄炎となり,髄内釘を抜去後に髄腔内持続洗浄を行い軽快した1例を報告する.患者は82歳,男性.16年前,耕運機に巻き込まれて左脛骨骨幹部開放骨折を生じ,髄内釘を挿入した.術後感染兆候はなかったが,術後14年となる2年前から骨折部付近の皮膚に瘻孔が出現し浸出液漏出が続くため受診した.CTで髄内釘近位端周囲に骨溶解像があり,骨折部には僅かな非癒合部を認めた.髄内釘周囲全体に慢性骨髄炎があるが抜釘しても荷重可能と判断した.径10mmの髄内釘を抜去したあと径13mmまでリーミングして髄腔内の軟部組織を可及的に除去してドレーンを留置する手術を行い,術後は髄腔内を持続洗浄した.2週間後には瘻孔が閉鎖して全荷重歩行とした.術後1年の現在,瘻孔や浸出液の再発はなく単純X線像で骨髄炎の再発も認めない.
  • 前本 遼, 佐藤 総太, 伊藤 拓馬, 三原 開人, 海野 陽資, 佐々木 将貴, 服部 晋明, 岩﨑 純治, 金澤 旭宣, 大沼 秀行
    2025 年 49 巻 p. 35-41
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    症例は60歳代の男性.3日前からの発熱と肛門痛で当院へ紹介.9時方向の殿部に発赤・硬結を認めたが,排膿はなかった.血液検査では炎症反応の上昇を認め,腹部造影CT検査で高位の肛門周囲膿瘍と診断し,入院した.CTガイド下ドレナージを行い,膿汁を排液した.ドレナージ後速やかに改善し,7日目にチューブを抜去し退院となった.退院後,殿部右側に波動を伴う硬結を認め,一部が自壊し排膿した.自壊部からドレーンを挿入し経過を見ていたが,ドレーン刺入部に腫瘤形成を認め,生検で粘液腺癌の診断となった.PET-CTでは腫瘤内に高度のFDGの集積を示したが,遠隔病変はなかった.肛門管癌の診断で腹腔鏡下直腸切断術を施行した.病理所見で,直腸から肛門管に全周性の110×90mmの狭窄性腫瘤を認め,組織学的には粘膜下に粘液産生性腺癌の浸潤を認め,肛門腺由来肛門管癌pT4, N0, V1a, Ly1a, BD1, Stage IIと診断した.術後補助化学療法を行い,術後1年の経過で再発は認めていない.
  • 中村 彩芳, 井上 真一, 松本 紘子, 貝田 亘
    2025 年 49 巻 p. 43-47
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    鼻骨骨折, 涙小管断裂, 小指切断などを受傷した2例のクマによる外傷の治療を経験した. 緊急で創洗浄および創閉鎖, 鼻骨骨折の整復, 涙小管断裂の再建および切断指再接着などを施行した. 1例において受傷6か月後に涙小管断裂が見つかり, 以降2度の涙小管の修復を要した. また,切断指を伴う症例において経過良好であった接着指が術後11日目に壊死し, 皮弁による再建を要した. 2例を通じ, クマによる顔面の外傷では初期評価において涙小管断裂の有無を確認することや切断指の場合には再接着後, 通常よりも長期間の観察が重要であることなどが示唆された.
  • 三原 開人, 前本 遼, 佐藤 総太, 伊藤 拓馬, 海野 陽資, 佐々木 将貴, 服部 晋明, 岩﨑 純治, 金澤 旭宣
    2025 年 49 巻 p. 49-53
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    症例は60代男性.幼少期より完全内臓逆位を指摘されていた.血液検査にてCEA高値を指摘され,下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に1/2周性の2型腫瘍を認めた.S状結腸癌cT3N1M0 cStageⅢbと診断し腹腔鏡下S状結腸切除術を行った.術者は患者左側に立ち,砕石位にて手術を開始した.中枢郭清の後,直腸剥離操作時は患者右側に立ち位置を変え切除・吻合は右側から行った.術者の立ち位置を変更したことで通常解剖に近い動作で手術を施行し得た.手術時間は221分,出血量は少量であった.術後は合併症なく経過し第10病日に退院となった.完全内臓逆位であっても,術前のシミュレーションを十分に行い,術者の立ち位置を工夫することで,安全に腹腔鏡下手術を施行できると考えられる.
  • 川本 雄一郎, 井川 房夫, 日髙 敏和, 落合 淳一郎, 井上 祐輔, 堀江 信貴
    2025 年 49 巻 p. 55-59
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    頭蓋内動脈硬化性病変による脳主幹動脈閉塞intracranial atherosclerotic disease - large vessel occlusion(ICAD-LVO)は急性期血行再建療法の10~20%を占めると報告されており,再開通維持のためステント留置が不可避な事態が起こりうる.Wingspan(Stryker, Kalamazoo, MI, USA)は脳主幹動脈が閉塞する緊急時のrescue stentとして承認された唯一のステントであり,当院では2023年11月より緊急時に使用可能なように院内常在させている.この度かかる病変に対してこのWingspanを使用して超急性期血行再建を行って安全に治療できた一例を経験したので文献的考察を踏まえて報告する.
  • 中村 彩芳, 井上 真一, 松本 紘子, 貝田 亘, 三原 祐子
    2025 年 49 巻 p. 61-65
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    症例は1歳女児. 数カ月前にシュレッダーに左第1趾が挟まれ, 爪甲と爪床の断裂を受傷し縫合処置を行った. 創傷治癒は良好であり, 爪甲の成長を外来で観察していた. 受傷から5カ月後に左足全趾に爪白癬を発症した. 小児の爪白癬の有病率は低く, 渉猟する限り乳児で片側の全趾に病変を認めた報告はないが, 外傷は爪白癬の原因の一つとして知られる. 本疾患は爪甲の健全な成長を阻害し外傷後の変形しやすい爪甲への影響も大きい. 本症例ではケトコナゾール外用にて改善を認めなかったが, 小児への使用経験の少ないエフィナコナゾールの外用による治療にて良好な結果を得ることができた. 文献的考察を含めて報告する.
  • 中村 彩芳, 井上 真一, 貝田 亘, 松本 紘子, 大沼 秀行, 長﨑 真琴
    2025 年 49 巻 p. 67-72
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    浮遊型母指多指症の2例を報告する. 1例は茎が細く長いタイプ, もう1例は茎が短く太いタイプであった. 除去した余剰指の病理学的検査を施行したところ, 神経細胞やエクリン汗管の異常増殖や膜性骨化などの特徴的な所見を認めた. 治療については, 外来での結紮もしくは全身麻酔下での切除を行い, 余剰指の分岐位置より機能的予後を予測し, 両親の希望とあわせて方法を決定した. 術後は大きな合併症なくおおむね良好に経過している.
投稿規定 編集後記
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