自殺の対人関係理論によれば、「自殺願望」に「獲得された自殺潜在能力」が加わったときに自殺が行動化される[9]。まず自殺潜在能力が獲得され、そこに「所属感の減弱」と「負担感の知覚」が重なることで生じた自殺願望が合流したときに、急性自殺状態を呈する。つまり自殺願望の発生が要となる。その観念(願望)の発生には「想像力」問題が背景にあるのではないか。
自殺観念を想像力問題として考察する。自殺観念を生む動的過程に想像力の意味形成のダイナミズムが仮定されるがそこに自殺観念の可塑性を見る。
想像力問題を考える際に、共通感覚の基礎としてのヴィーコの構想力(ingenium)や想像力(phantasia)、自殺学の祖といわれるEdwin Schneidmanの「脱出」、A.シュッツの「多元的現実」や「移行」などがとりあげられる。
自殺問題や自殺予防の理論と実践には、細目的諸条件に関する統計的数字化と科学的(後追い的)追求と同時に人間の想像力の探究が要請される。
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