脊髄外科
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30 巻, 1 号
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特別寄稿
脊椎脊髄疾患の治療に関する指針(ガイドライン)
  • 高見 俊宏, 黒川 龍, 関 俊隆, 小柳 泉, 日本脊髄外科学会学術委員会
    2016 年 30 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー
     脊髄神経膠腫はまれな病態の1つである. 症例数はほかの脊椎脊髄疾患に比べて圧倒的に少ない. 後療法を含めた治療方針は, 頭蓋内の神経膠腫に準じて決定されることがほとんどである. しかし, 脊髄神経膠腫の臨床像は, 実際には頭蓋内神経膠腫とは異なり, 生物学的悪性度も同一なのかどうかも明らかになっていない.
     本指針の目的は, 脊髄神経膠腫の治療に関する現時点での到達点を, 文献の検索によって明らかにすることである. 検索の対象病態はWHO grade Ⅰの粘液乳頭状上衣腫, 上衣下腫, 毛様細胞性星細胞腫, WHO grade Ⅱの上衣腫, びまん性星細胞腫, WHO grade Ⅲの退形成性星細胞腫, WHO grade Ⅳの膠芽腫とした. このうち, 退形成性星細胞腫と膠芽腫は, 悪性星細胞腫あるいは悪性神経膠腫として報告する文献がほとんどであったため, まとめて1つの病態とし, 計6病態に関して指針を作成した. なお, 乏突起細胞系腫瘍は, 頭蓋内神経膠腫では, 星細胞腫系腫瘍に比べて予後が異なることが知られているが, 脊髄神経膠腫では報告が少なく, 今回の検討からはずした.
     指針の作成方法は, おもに外科治療に関する文献を, PubMedを主体として検索した. 文献のエビデンスレベルは, レベルⅠ : よくデザインされたランダム化比較臨床試験, レベルⅡ : よくデザインされた非ランダム化比較臨床試験, レベルⅢ : 臨床記述研究, レベルⅣ : 患者データに基づかない専門家の意見, の4段階に分類した.
     文献の内容とエビデンスレベルより, 外科治療 (摘出程度), 放射線治療, 化学療法に関して, 有効性に関する現時点での判断を, 推奨として記載した.
     推奨のレベルは, 文献のエビデンスレベルから次のように分類した. レベルA : 複数のレベルⅠのエビデンスに基づいた推奨, レベルB : 複数のレベルⅡのエビデンスに基づいた推奨, レベルC : 複数のレベルⅢのエビデンスに基づいた推奨, レベルD : レベルⅣに基づいた推奨, の4段階とした. 結果として, レベルⅡ以上の文献はなく, ほぼすべて推奨レベルCであった.
     本指針は, 脊髄神経膠腫の治療の標準を示すものではない. また, 治療手順を示すガイドラインとは全く異なるものである. 脊髄神経膠腫の6病態に関する現時点での知見を提示し, 今後の治療方針の決定や, 新しい治療手段の構築に役立てることを目指したものであることを理解していただきたい.
  • —臨床研究に用いられるスコアリングシステム—
    金 景成, 佐々木 学, 川本 俊樹, 小柳 泉, 日本脊髄外科学会学術委員会
    2016 年 30 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー
     ここに示す脊椎脊髄疾患の神経症状の評価方法は, 症状のスコア化であり, 臨床研究に使用されるものである. 種々の疾患を対象として多くの評価方法が使用されている. 実際の臨床の場での個々の患者の評価は, 厳密な神経学的診察と臨床所見によって行われるべきである. しかし, 治療成績の分析・評価を行う臨床研究としては, 複数の症例の症状をスコア化する必要がある. 本指針では, 脊椎脊髄疾患の各種評価方法 (スコアリング法) について, 現在どの疾患にどのような評価方法が行われているかを文献のレビューから提示した. 文献のエビデンスレベルの評価や, 推奨レベルの決定は行っていない. 本指針の目的は, 脊椎脊髄疾患の臨床研究の計画と評価方法の決定に役立てることである.
     本指針では, これまでの文献で多く採用されてきた各種評価方法を解説し, 臨床研究間の比較に有用な共通言語として紹介した. しかし, そのことは, 新たな評価方法の導入・開発の妨げになってはならないものである. 評価方法 (スコア化) は, 患者が示す症状の一部を, 臨床研究において統計学的解析を可能とする変数の1つに置き換えることであり, すべての症状・臨床経過をスコア化することは不可能である. 研究目的に応じたスコア化が必要といえる. 本指針は, 臨床研究の方法を示すガイドラインではない. 今後の脊椎脊髄疾患の臨床研究計画や, より有用な評価方法の構築の参考にするために, 現時点での知見を示したものである.
認定医-指導医のためのレビュー・オピニオン
  • 望月 秀紀, 柿木 隆介
    2016 年 30 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー
     かゆみはかきむしりたくなる不快な体性感覚であり, アトピー性皮膚炎など皮膚疾患において多く認められる症状である. また, 末梢や中枢における神経疾患においてもかゆみが症状としてあらわれることがある. かゆみの治療では抗ヒスタミン薬が一般的に用いられているが, 疾患に伴うかゆみ (慢性掻痒) には十分な効果を示さないことが多い. そのため, より効果的なかゆみの治療法開発が強く望まれている. そのためにも, かゆみや慢性掻痒のメカニズムを理解することが重要である. 1994年, はじめてかゆみの脳機能イメージング研究が報告された. その後, さまざまな研究者によって健常者や慢性掻痒患者を対象にかゆみの脳研究が行われた. さらには, 非侵襲的脳刺激法を用いたかゆみの抑制に関する研究も行われた. 本稿ではこれまでに報告されたかゆみの脳研究について概説する.
教育総説
誌上フォーラム
総説
  • 中尾 弥起
    2016 年 30 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー
      Most patients with significant spinal cord damage have permanent symptoms and may be wheelchair-bound, depending on their residual motor function below the spinal cord lesion. Spinal cord damage, whether caused by injury or disease, is currently not repaired by any therapy. The sensory, motor, and autonomic functions of each segment depend crucially on connections with supraspinal sites for all conscious or voluntary actions. Damage to these connections leaves spinal segments caudal to the lesion site partially or totally isolated from the brain, resulting in debilitating consequences. Studies in humans have demonstrated, however, that the lumbosacral spinal circuitry retains an intrinsic capability to oscillate and generate coordinated rhythmic motor activity even when isolated from brain control. Although the anatomical architecture of locomotor central pattern generators remains poorly understood in mammals, the functional phenomenon of central pattern generation has been documented extensively. Techniques to stimulate spinal networks lend themselves as potent tools to facilitate locomotor recovery after severe spinal cord injury. Among several experimental strategies tested for activation of locomotor circuits in mammals after complete spinal cord transection, electrical stimulation has been investigated in human spinal cord injury. A recent clinical study demonstrated that some patients with complete paralysis were able to perform voluntarily controlled movements with epidural stimulation. In combination with epidural electrical stimulation of lumbosacral segments, activity-based rehabilitation can restore supraspinally mediated movements. Electrical neuromodulation therapies that activate spinal cord central pattern generators open up new avenues for treatment of spinal cord injury in human subjects.
  • 川口 善治
    2016 年 30 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー
      Osteoporotic vertebral fracture (OVF) is a common condition in the elderly population. Vertebroplasty and kyphoplasty were introduced in the 1990s and since then, became standard procedures for the treatment of OVF. Balloon kyphoplasty (BKP) is a technique that involves percutaneous advancement of a trocar in the fractured vertebral body (VB), followed by the insertion of a special balloon, which is subsequently inflated for restoring the height of the VB. The space created by the balloon is filled with polymethylmethacrylate to restore stability. BKP has been used for 5 years in Japan, and its outcome has been described in several reports. In this paper, we review previous studies and reports on the surgical results, efficacy, and limitations of BKP.
Extended Abstracts
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