社会政策
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巻頭言
小特集1■「福井モデル」を問う
  • 清山 玲
    2018 年 10 巻 2 号 p. 5-7
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
  • ―ジェンダーインパクトの違いに着目して―
    金井 郁
    2018 年 10 巻 2 号 p. 8-22
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,同居する親が本人の親か配偶者の親か,核家族世帯なのかといった世帯類型に着目しながら,福井県において未就学児を育てる男女の労働と生活の実態を考察することで「福井モデル」をジェンダー視角から検討し直すことを目的とする。 分析の結果,以下の点が明らかになった。福井県では三世代同居が一様に女性の就業確率を高めるのではなく,女性本人の親と同居することが就業確率を高め,家事の頻度は男女ともに三世代同居することで軽減されるが,男性はもともと女性よりも頻度が少ない家事をさらに軽減させる。一方,男性が自分の親と同居することは,毎日子どもの世話をすることにむしろマイナスの効果がある。三世代同居で親が子育てや家事を支援し女性の正社員就業を促す,という単純な構図ではなく,世帯内のジェンダー平等を阻害する可能性があることも示唆される。

  • 斎藤 悦子
    2018 年 10 巻 2 号 p. 23-39
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     福井県は日本が抱える多くの課題に対し,優れたモデル的要素を持つと考えられるが,本稿では女性が収入労働に従事できるという点に着目した。本研究の目的は以下の3点である。①共働き妻の家事労働時間と世帯内の家事労働の社会化の実態を明らかにする,②家事労働の社会化の作用を三世代世帯と夫婦と子ども世帯の世帯類型から検討する,③家事労働の社会化の程度が世帯内ジェンダー平等に与える影響を考察する。 生活時間と質問紙調査の結果,共働き妻の家事労働時間は平日は約2時間半,休日は6時間45分である。家事労働の社会化として,食洗器,乾燥機付き洗濯機,掃除ロボットを取り上げたが,これらの家電製品の所有率は全て全国平均よりも高い。三世代世帯の妻の家事労働時間は夫婦と子ども世帯の妻より長く,家事労働の社会化の程度が高まると,男性は家事労働時間が減少することが判明した。

  • ―福井県に着目して―
    戸室 健作
    2018 年 10 巻 2 号 p. 40-51
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     近年,都道府県別の貧困の大小に関する要因分析が進みだしている。そうしたなか,本稿は,初めて都道府県別子どもの貧困率を対象にして,その高低についての要因分析を行った。分析方法は,従属変数を子どもの貧困率にして,独立変数には,「最低賃金」,「捕捉率」,「非正規率」,「共働き率」,「三世代同居率」,「失業率」,「女性有業率」という7つの項目を用いて重回帰分析を行った。子どもの貧困率に影響を与えている要因は,大きい順に失業率,三世代同居率,最低賃金,共働き率,非正規率となっていた。このうち,子どもの貧困率にプラスの影響を与えている要因が,失業率,共働き率,非正規率であり,マイナスの影響を与えている要因が,三世代同居率と最低賃金であった。これらの分析結果を基に,子どもの貧困率が最も低い福井県について独立変数のデータがどうなっているのかを調べ,その特徴と課題を明らかにした。

小特集2■ナショナル・ミニマム視点から見た高齢期の生活保障
  • 浜岡 政好
    2018 年 10 巻 2 号 p. 52-54
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
  • 宮寺 良光
    2018 年 10 巻 2 号 p. 55-67
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,セーフティネットである生活保護受給にいたった高齢者の生活困窮化要因について分析を試み,高齢期のナショナル・ミニマムのあり方について検討することにある。近年の生活保護受給者の増加および受給率の上昇の背景には,生活困窮化する高齢者の増加が影響している。これには経済状況のみならず,「構造改革」が少なからず影響しているものと考えられる。年金給付額の減額のほか,医療や介護の制度における保険料や利用者負担の増加などが,高齢者の生活破綻を助長してきた可能性が否めない。 以上の問題意識から,生活保護世帯に関する調査から生活困窮化要因について分析を試み,ナショナル・ミニマムのあり方について問題提起をおこなう。

  • 中澤 秀一, 小澤 薫
    2018 年 10 巻 2 号 p. 68-81
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,ひとり暮らし高齢者の生活実態を明らかにするとともに,高齢期のナショナル・ミニマムを保障するために必要な費用を示すことも目的にしている。なお,これらの分析は,全国労働組合総連合(全労連)加盟地域組織の協力を得て実施した最低生計費調査におけるひとり暮らし高齢者のデータに基づいており,最低生計費試算の手法は,マーケット・バスケット方式(全物量積み上げ方式)を採用している。 収入が,住宅,人付き合い,社会参加などに影響をもたらす傾向がみられた一方で,収入に関係なく高齢者にとって自家用車は必需品になっていること,経済的に苦しくても冠婚葬祭には無理をして参加している高齢者の生活実態が見出された。また,ひとり暮らし高齢者(新潟市在住,70歳女性)の最低生計費は月額約15万円(税・社会保険料を含まず)が必要であるという結果が得られた。この金額は,ひとり暮らし高齢者の平均年金受給額を2万円以上も上回っており,いずれかの費目を削らざるをえない高齢期の生活構造が垣間見える。

  • 畠中 亨
    2018 年 10 巻 2 号 p. 82-92
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,公的年金を中心とした日本の高齢期の生活保障諸制度がナショナル・ミニマムに足るものであるのかを検証する。2007年の最低賃金法改正により,地域別最低賃金額は,生活保護の最低生活費を上回るよう整合性が図られることとなった。一方,高齢期のナショナル・ミニマムの機能を果たすべき公的年金の給付に関しては,いまだそのような措置はとられていない。このような観点に関する先行研究では,生活扶助基準額と基礎年金額との比較に関する分析が主として行われてきた。だが,実際の公的年金の受給は,基礎年金のみでなく報酬比例年金も受給しているケースが多く,生活保護と併給する受給者でも,報酬比例年金受給者が多数派である。また,高齢期を対象とする生活保障は,公的年金による所得保障だけでなく,医療,介護,住居の保障も考慮する必要がある。本稿では,公的年金を中心に構成される高齢期を対象とした生活保障諸政策と最低生活費とを比較し,その十全性と課題を明らかにする。

投稿論文
  • 田中 良一
    2018 年 10 巻 2 号 p. 93-104
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,大河内一男(1905-1984)と新カント派との関係に着目し,これと関係する大河内のヴェーバー解釈の検討を行う。ここでは大河内のヴェーバー解釈の特徴を2点指摘する。第一に,大河内は,存在と当為の二元論に立つ新カント派の影響をヴェーバーに見た上で,経験科学はいかなる当為を選択すべきかという問いに答ええないと考えたヴェーバーのWertfreiheit概念を批判した。第二に,大河内は,ヴェーバーが学の外部において価値判断を下すことを許容するにとどまらず,むしろそれを要求したと解し,ヴェーバーのこの側面を評価した。以上のヴェーバー解釈が大河内理論にいかに反映しているかを解明し,大河内の哲学的側面を考慮した大河内解釈の提示を行う。

  • 郭 芳
    2018 年 10 巻 2 号 p. 105-116
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     急速な高齢化の進展により,中国は国内および外国の民間資本を導入し,市場サービスの利用を推進している。本稿では,中国における福祉の市場化に注目し,高齢者ケアの市場の展開と福祉の市場化の特徴を検討した。考察した結果,中国の福祉の市場化は基本的な方向性として「家族から市場へ」展開し,民間事業者は高齢者ケア供給者に占める割合が高いことから,「民営化」を通して市場化が進んできたことが明らかになった。また,中国の福祉市場は,市場の構成要素である選択,価格,競争を全て備えていると同時に,行政からの規制・指導監督が弱いため,現段階では自由市場に近いと考えられる。しかし,この状態にある中国の福祉の市場化は,事業者間の不平等な競争関係,費用の全額負担によるサービス利用の格差などの問題をもたらしている。

  • ―日韓の介護保険制度における家族介護労働への支払いからの示唆―
    森川 美絵, 金 智美
    2018 年 10 巻 2 号 p. 117-128
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     ヨーロッパ先進国では,ケアの市場化の中でケアへの現金支払いの導入が進み,ケアワークの政策的な規制のあり方にも影響している。他方,日本と韓国は介護保険制度(韓国は老人長期療養保険制度)のもとでケアの市場化を進めたが,保険給付としての現金給付は本格化していない。また,両国には間接的な家族介護労働への支払いの仕組みはあるが,その実績は大きく異なる。以上をふまえ,本稿は,日本と韓国の介護保険制度における家族介護労働への支払いについて,それをケアへの支払いの類型と制度展開に関する研究の流れに位置付けた上で,支払いの施策概要を示す。また,間接的な支払いの実績が大きい韓国に絞り,実績推移とそれに対する政策認識に関する調査結果を提示分析する。最後に,日韓の状況を,ケアの市場化に伴うケアワークの規制の観点から,特にインフォーマルなケアワークとケアワーク市場との関連付けの政策的相違に着目して考察する。

  • ―2010年代の変化に注目して―
    武川 正吾, 角 能, 小川 和孝, 米澤 旦
    2018 年 10 巻 2 号 p. 129-141
    発行日: 2018/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

     社会支出に関する社会意識の4時点の反復横断調査の結果,2000年代を通じた高福祉高負担(福祉国家)への支持の上昇が確認できたが,2015年調査ではこの傾向が逆転した。各調査の回収率,サンプルサイズの差異を考慮し,性別・年齢でウェイト調整したデータによる再分析を実施したが,逆転の事実は変わらなかった。支持者の属性に関して,2000年と2015年のデータをロジスティック回帰モデルによって比較したところ,各種属性による高福祉高負担支持の構造が変化していることがわかった。年齢に関して,2000年には若年層(低い支持)から高年齢層(高い支持)への線形的関係が存在したが,2015年にはそれがなくなっていた。さらに年齢階層別分析と出生コーホート分析を行った結果,時系列に関する大きな趨勢は同様であるものの年代・コーホートごとに変化の仕方にばらつきがあることがわかった。とくに若い世代の高福祉高負担支持が相対的に上昇している傾向が確認できる。

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