難しい政治環境及び激しいコスト削減の圧力により,アメリカの高等教育の機関の使命・任務も教員等の生活も脅かされている。40年程前から,予算削減のため,大学の低賃金・非常勤従業員への依存度がだんだん高くなってきた。教員の終身在職権・終身制の比率は1975年の45%から2015年までに30%まで落ち込んでおり,同期間に,非常勤教員の割合は55%から70%まで上がってきた。しかし,多くの非常勤教員の責任の重さは終身在職権の責任程度と全く異なっていない状態にある。さらに,不可欠な研究・教育・技術的な支援を提供している院生や職員も待遇がよくない。
これらの問題に対応するため,組合活動及び待遇改善の運動がだんだん活発化してきた。近年の組合活動の活性化及び公教育の教員の躍進により,多くの大学及びコミュニティ・カレッジの従業員が雇用条件の改善を獲得できたし,また組合の組織拡大活動が進展してきた。ただ,アメリカの労働組合運動と同様に,高等教育の労働権利活動も重大な障害に直面する。大きな問題の一つとして,最高裁の判決などにより,教員及び職員,院生は,組合に加盟する権利が確立しにくい状態にあるということである。
難しい政治環境を念頭に置きながら,この論文では高等教育の雇用条件及び権利闘争の状態を探る。
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