企業別組合は,企業の事業活動の維持に協力し(生産主義),それをもとに成果の分配を追求することを活動原理としている。本稿は,激烈をきわめる今日の競争下において,その活動原理がどのような影響を受けているかを検討する。具体的には,(1)モデルチェンジの連続する自動車工場の生産維持,(2)職場組織の激変の緩和,(3)長労働時間問題への対処,(4)非正規労働者の増加への対応,にそくして企業別組合の活動を考察する。分析の結果,組合は生産管理の空隙を埋めることによる要員問題と労働時間問題の改善管理の個別化の行き過ぎの是正,非正規問題に関しては,非正規労働者の訓練の要求などを進めており,それらの背後には生産主義が息づいており,それが改善につながっていることが明らかになった。ただし,生産主義が及ぶのはいわゆるスキルの内部化した労働者にまでであって,それを越えれば活動原理が希薄化し,成果も削がれることを組合は予知しており,その自覚が企業別組合の活動の内容と範囲を規定することになっている。
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