ベーシックインカム(以下,BI)をめぐる議論は近年盛んになりつつあるが,その多くは未だにジェンダーに無自覚だと指摘される。他方でフェミニズムの側も,BIを「家事労働への支払い」と綾小化して捉え,さほど検討しないまま批判的に捉えている向きが多い。こうした事情を反映してか,BIとフェミニズムの交差はこれまであまり論じられてこなかった。その一つの理由に,「口止め料か,解放料か」と言われるような,BIの女にとっての両義性を挙げることができる。それは,性別分業,自律的な所得保障へのアクセス権,女の劣等なシティズンシップ等,多岐にわたって論じられてきた。本稿では,これら多岐にわたる論点を整理し,BIとフェミニズムという二つの主張が生産的に交差していくための予備的考察を提出している。とりわけ,性別分業に対するBIの含意を,BIの類似政策であるケア提供者手当および参加所得との対比において明らかにした。
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