近年,韓国の社会政策についての関心が日本で高くなり,また,韓国でも社会政策をめぐって活発な議論が行われ,重要な研究成果が出されつつある。本稿は,日本国内と韓国での社会政策研究をレビューし,到達点と今後の課題を明らかにすることを目的とし,以下の点を明らかにした。第1に,2国間比較の1つの大きな目的は社会政策の生成と発展に関して因果関係を明らかにすることであり,それと1国に限っての分析から導かれる因果関係との連関が問われるべきである。第2に,韓国において社会投資論(戦略)は短兵急に具体化されるべきではなく,従来の所得保障との関連を丁寧に吟味すべきである。第3に,所得階層別の医療利用格差の分析にあたっては縦断的な分析が必要である。第4に,韓国では福祉サービスの分野で従来から民間依存の傾向が強く,そのため,福祉サービス供給における国家の役割,規制についての研究の深化が必要とされている。
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