本稿の目的は,東アジアで経済統合が進展し,同時に少子化傾向が続く状況において,国際労働移動が果たす役割を理論的に考察し,国際労働移動の決定要因を実証的に明らかにすることを通じ,外国人労働者受入れ政策を改革するうえの政策課題を明らかにすることである。その結果,(1)人口減少地域への外国人労働力の流入は,地域労働市場における賃金低下などの負の効果をもたらすことなく,労働需給ミスマッチを緩和し得る,(2)産業集積が進む地域では,活発な資本や高度人材の流入があれば,賃金低下などの負の効果を抑制し得る,(3)外国人の永住権の取得は,経済統合の活性化や人材流出の緩和などのために,積極的役割を果たし得ることがわかった。これらの結果を踏まえ,筆者は,第1に,外国人労働者政策は,労働市場の需給ミスマッチを緩和するために活用すべきであること,第2に,在留資格変更は,高度人材の流入を促進し,経済統合を促進するうえで効果的な手段であること,第3に,中・低技能の外国人人材の受入れも,一定の範囲で,国内雇用増加と補完的であること,第4に,外国人労働者政策と社会統合政策を連動させることは,緊急で不可欠な課題であることを指摘している。
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