社会政策
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9 巻 , 1 号
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巻頭言
特集 財源調達と社会政策
  • 玉井 金五
    2017 年 9 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     高騰する社会保障費のための財源調達をいかに進めるかについて,わが国で激しい議論が続いている。もっとも,これまでの経過をみると,この種の論議はかなり以前から継続してなされてきたものであり,何ら目新しいものではない。しかしながら,「納得のいく」負担について国民の合意を得るのは至難であり,解決策を展望するのは極めて厳しいものがある。税,社会保険のいずれに重点を置くべきかについて,これまでの関連する学説,制度等を振り返りながら,国民にまずは「納得のいく」事実関係を提示することこそが「納得のいく」負担に繋がる第一歩ではないか。

  • 大沢 真理
    専門分野: 税・社会保障の純負担を比較ジェンダー分析すると
    2017 年 9 巻 1 号 p. 12-28
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     税・社会保障の純負担などを比較ジェンダー分析し,相対的貧困という側面において日本の生活保障システムの特徴を浮き彫りにしたい。貧困は当事者にとって深刻であるだけでなく,社会の安定を損ない経済成長も阻害するなど,恵まれた層にとっても克服対象である。相対的貧困概念については欠点も指摘されているため,この指標の意義を再確認する。公的社会支出以外の官民の福祉努力の機能を推定したうえで,OECD諸国の最近の貧困率と政府の福祉努力の関連を検討する。日本では低所得層こそ租税抵抗が大きくても不思議ではないこと,負担面を国際比較すると,日本のひとり親は税・社会保障制度によって虐待されているといっても過言ではないこと,所得格差の緩和においてタックス・ミックスよりも給付が重要と指摘されるが,貧困の緩和について累進的直接税の効果を軽視するべきではないことなどが,明らかとなる。そして,本特集全体から政策的含意を導いて結びに代える。

  • ―税・社会保険料負担と国民年金未納問題―
    四方 理人
    2017 年 9 巻 1 号 p. 29-47
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,社会保険の問題点について,社会保険料と税負担に関する実証研究から検討する。具体的には,税及び各種社会保険料負担の所得に対する累進性とそれぞれの負担が近年の所得格差の変化にどのように影響を与えてきたかを検証し,次に,国民年金の未納について考察を行った。主な分析結果は,日本の社会保険料負担は,所得に対してほぼフラットな負担となっており,医療費の自己負担まで含めると逆進的な負担となっていた。しかしながら,近年,所得格差が拡大するなかで,社会保険料負担の増加は可処分所得の格差をむしろ縮小させていた。また,保険料未納問題に関して,低所得の無業と被用者では免除制度が機能している一方,所得が高くなっても納付率の変化は小さかった。最後に,雇用の非正規化による低所得の被用者が増加することで,本来の社会保険の機能がより重要となるため,被用者保険の適用拡大をより一層押し進めることを提案する。

  • ―高齢者にどう納得してもらうのか―
    大岡 頼光
    2017 年 9 巻 1 号 p. 48-62
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     1.高齢者優先のシルバー民主主義を止めるには,多数派の高齢者も納得できる論理が要る。子どもや若者向けの政策充実は,労働力確保で高齢者の年金制度等の維持が目的と説得すべきだ。日本の高齢者が納得する論理を,高齢化でも家族・教育政策を充実したスウェーデンに本論は探る。2.スウェーデンは,①低所得者に税金が払える現金給付を支給し,給付に課税して課税ベースを拡大し,②高所得者も年金保険料本人負担ゼロとする普遍主義で,③負担者と受益者を分断せず,制度の政治的支持を高めた。3.スウェーデンが高齢化率世界最高の1990年代に高等教育費を充実し,年金を改革し,高齢者就労を促した背景を述べる。4.日本の高齢者の所得格差と貧困をみて,税・社会保険料研究の今後の課題を確認する。制度の政治的支持が弱まるため,高所得者への基礎年金支給額を削減すべきでなく,その年金への課税を検討すべきだ。以上を実現するためには組織改革も必要である。

  • ―租税と社会保険料をめぐる論点―
    池上 岳彦
    2017 年 9 巻 1 号 p. 63-76
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     租税・社会保険料とも法令に基づいて納付されるが,租税は特定のサービスに直結しないのに対して,社会保険料はサービスとの対価性があるとされる。本稿は両者を体系的に比較検討する。 ①個人所得税は総合課税により水平的公平を実現する。正規雇用者の社会保険料は主たる勤務先の収入のみに賦課される。②個人所得税は超過累進税率の適用により垂直的公平を実現するが,社会保険料の負担は逆進性をもつ。③社会保険だから権利性が生まれるとの議論もあるが,租税によるサービスを受けるのも国民の権利である。④租税の民主性は憲法・法律により担保される。社会保険に関する被保険者の参加度合いは多様である。⑤社会保険には租税が給付財源の半分を超える制度もある。他の社会保険への拠出金にも租税と同質のものがある。 普遍主義的給付の財源は,社会保険料から租税へシフトするのが自然である。その際,消費課税のみならず所得課税・資産課税も重要である。

小特集■同一価値労働同一賃金研究の新地平
  • 遠藤 公嗣
    2017 年 9 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー
  • ―中小企業のあるスポーツ関連会社の事例―
    大澤 卓子
    2017 年 9 巻 1 号 p. 80-97
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     職務評価は,「同一価値労働同一賃金」を達成するのに欠かせないものである。しかしながら,日本において一般的に職務評価の実行は困難であると考えられていたため,職務評価の事例報告は少なかった。そこで本稿では2つのテーマを報告する。第1のテーマは,日本のビジネス界で実際に実施されている職務分析の実態である。第2のテーマは,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試行した結果である。まず,中小企業のあるスポーツ関連会社を事例として,職務分析の詳細な手順を報告する。なお,この事例は2つの特徴を持っている。1つは,この事例の会社は,中小企業としては珍しく,研究開発,生産,マーケティング,そして物流といった多数の部門を持つことである。2つ目は,この事例は,ブルーカラー正社員とホワイトカラー正社員の全員の職務について職務分析を実施していることにある。次に,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試行した結果を報告する。この事例で扱う会社は,職務評価の実施に加えて,現在,新しい人事評価制度も開発しているところだ。開発の過程で明らかになったことは,管理者も部下もともに,すべての従業員が同じ人事評価基準を使うことに疑問を持つことである。そこで私は,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試みに実施した。その理由は,この職務評価の結果が,人事評価の基準または制度の改善に役立つかもしれないと考えたことにある。

  • 針尾 日出義
    2017 年 9 巻 1 号 p. 98-108
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     現在,わが国では仕事の中身は変わらない場合においても,雇用区分等が異なるだけで,労働者の処遇に不当な格差が存在することが当たり前の状態にある。しかし,未だにこの課題の解決,つまり「同一価値労働同一賃金の考えの実現」に向けた実態的な研究は多くはない。同一価値労働同一賃金の実現においては,正規労働者の賃金ベースを非正規労働者の賃金ベースにあわせて低下させることは現実的ではなく,非正規労働者の賃金ベースを正規労働者に合わせて高めることが現実的である。その場合,増加する人件費の原資確保が非常に重要である。しかし,原資を確保するための経営体力には差がある。もちろん原資の確保を検討するとき,「原資は経営者がどうにかするもの」という考えが自然である。しかし本論は,それとは異なる方法による,増加原資確保についての事例の考察である。その結果,原資捻出という課題への対応という観点で,同一価値労働同一賃金実現の可能性を見出せた意味のある事例研究となった。 本論は,現在の超高齢化社会において社会的にも非常に重要性が高く,そして,国家資格職という専門職である看護師を研究の対象として調査研究を行った。

投稿論文
  • 熊沢 由美
    2017 年 9 巻 1 号 p. 109-121
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     明治初期に西洋医学が普及する過程では,医師数など,さまざまな混乱や問題が考えられる。本稿の関心はこうした時期の医療保障にあり,医療保障の重要なアクターとしてキリスト教の医療伝道に注目した。1875〜83年まで新潟県に滞在した宣教医パームを事例に,その意義を考察した。 新潟県の事例から見えてきたのは,西洋医学への移行期における地域の実情であった。医育機関ができても,西洋医は微増に留まった。ドイツ医学にもとづく医育機関の整備は,東京に約10年遅れた。医療関係者や住民の西洋医学の受容の度合いも一様ではなく,地域によっては嫌悪感すら見られた。 パームの医療伝道は,新潟県の人々に西洋医学の受診と医育の機会を提供し,西洋医学の受容を促した。国の政策を補い,医療保障の重要な役割を果たしたと言える。医療伝道の行われた地域があったことは,日本の医療史において記録されるべきことである。

  • ―戦後直後期における職務重視型人事労務管理の萌芽に関する一考察―
    鈴木 誠
    2017 年 9 巻 1 号 p. 122-136
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,戦後直後期の1950年に三菱電機において職階制が導入されたプロセスを詳細に検討し,それを通して同社における職務重視型人事労務管理の萌芽がどのように生み出されたのかを考察した。本稿の考察から明らかになったのは,以下の3点である。第一に,戦前の出来高給との接続が容易であったこと,第二に,三菱電機は職階制を導入する際,労働組合と組合員の抵抗を考慮して,制度の修正・工夫を行ったこと,第三に,労働組合は必ずしも職階制に否定的ではなかったこと,である。三菱電機が1950年に導入した職階制のもとでの職階給は,賃金に占める比率が低く,査定により上下変動するものであったが,とにもかくにも職務評価による職務価値序列に基づく人事処遇制度を確立した。このことを,本稿では,三菱電機における職務重視型人事労務管理の萌芽と位置付ける。この萌芽は,その後の同社における人事制度の展開の中で花開いていくことになる。

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