社会政策
Online ISSN : 2433-2984
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9 巻 , 2 号
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巻頭言
小特集1■日本における福祉国家論の再発掘:エスピン - アンデルセン以前
  • 玉井 金五
    2017 年 9 巻 2 号 p. 5-7
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー
  • ―北岡壽逸をめぐって―
    杉田 菜穂
    2017 年 9 巻 2 号 p. 8-22
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     北岡壽逸(きたおか・じゅいつ:1894―1989)は,戦前から戦後にかけて活躍した社会政策学者である。早くから福祉国家論を展開した北岡の社会政策論の特徴は,人口問題への関心にある。1939年に創設された厚生省人口問題研究所の初代企画部長に就いた北岡の見識は,家族計画論から社会開発論へと展開する人口―厚生行政の発展に活かされた。 北岡の福祉国家論の再発見に際して,北岡と大河内一男(おおこうち・かずお:1905―1984)の対比を重視した。北岡は平賀粛学(1939年)で休職処分となった河合栄治郎(かわい・えいじろう:1891―1944)の後任として東大・経済学部の社会政策講座を担当することになった。そのことに不満を覚えた河合の弟子で,1939年当時東京大学経済学部の助手であった大河内と北岡の関係はねじれたものとなり,社会政策における立場の違いについてお互い意識しつつも,まともに議論を交わすことがなかった。

  • ―労働時間と社会保障の視点から―
    藤原 千沙
    2017 年 9 巻 2 号 p. 23-35
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     日本は稼働年齢層に対する社会保障給付が少なく,賃金で生計費をまかなうことが期待されている。家族生計費に見合った賃金水準の獲得が労働運動でも目標とされてきたが,賃金と不可分である労働時間の視点は弱く,柔軟かつ無限定に労働時間を提供することが「生活できる賃金」が得られる事実上の条件であった。不安定・無限定な労働時間では子育ての時間は確保できず,母子世帯をはじめケアを担いながら働く労働者は「生活できる賃金」を得ることができない。本稿は,戦前の学会では最重要課題だった労働時間への関心が戦後弱まったのは大企業男性正社員の研究に関心が集中したからではないかとして,女性労働研究を継続していた竹中恵美子氏の業績を振り返った。そこでは90年代以降に国際的に発展する福祉国家とケア,脱商品化,脱家族主義化といった論点が60〜80年代から見出されており,賃金と労働時間と社会保障の相互関係に関する主張に着目した。

  • ―予測不能な時代の社会政策―
    佐口 和郎
    2017 年 9 巻 2 号 p. 36-39
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー
小特集2■日韓医療保険における保険料賦課の課題
小特集3■ケアの市場化と公共圏の再編
  • ケアの市場化と公共圏の再編
    森川 美絵
    2017 年 9 巻 2 号 p. 73-
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     本特集では,ケアの(ポスト)市場化の展開の動向と課題を,公共圏の変容・再編過程との関連から,また,国際的観点から検討する。ケアの市場化は,多くの国で福祉供給のパラダイムを転換させたが,実際の展開やそれに伴う公共圏の変容・再編過程は,各国の制度的背景から影響を受ける。これらをふまえ,第1論文(平岡会員)では,社会サービス市場の分析枠組みを国際的・理論的に整理し,それを,日本を含む市場化改革の国際比較研究に適用する可能性を検討する。第2論文(長澤会員)では,イギリスを事例に,社会的ケアの市場化の展開を準市場の構造に着目して分析し,その影響と課題を考察する。第3論文(須田会員)では,日本の介護保険制度について,ケアの市場化に伴うサービスの民営化が,市区町村単位の地域に及ぼす影響を,サービス供給組織の広域化の観点から検討する。本特集はJSPS科研費15H03427,15H03433 の成果を含む。

  • 平岡 公一
    2017 年 9 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     1990年代以降の多くの先進諸国における社会サービスの市場化改革の展開に対応して,海外においては,社会サービス市場の分析枠組に関する理論的検討と,市場化改革に関する多くの実証的な比較研究が行われている。しかし,日本では,準市場論を除くと,これらの諸研究の特徴や意義について,まだほとんど検討がなされていない状況にある。このことを踏まえ,本研究では,報告者が提起した準市場の2類型論とともに,政治的要因との関連に着目するJane Gingrichの福祉国家の市場類型論,および文化的要因を重視するIngo Bodeの福祉市場文化論を,それらの理論枠組に基づく国際比較研究の知見とともに検討し,それらの理論枠組を,日本を比較対象に含む市場化改革の国際比較研究に適用する可能性を検討した。

  • ―準市場の類型による分析―
    長澤 紀美子
    2017 年 9 巻 2 号 p. 87-100
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     イギリスは,1990年代のコミュニティケア改革により,欧州の主要国の中で最初に社会的ケアを市場化した国であり,当初は民間委託,その後労働党政権の第2期以降はパーソナライゼイション政策を通して市場化,すなわち準市場の導入が進められた。 本稿では,平岡による準市場の類型論を踏まえ,イギリスの社会的ケア領域における市場化の展開を準市場の構造に着目して分析し,市場化がもたらした影響と課題について考察することを目的とする。分析を通して,社会的ケアの準市場は,現物給付中心の「サービス購入型」から,消費者主導型現金給付のパーソナライゼーション政策の導入により「利用者補助型」に移行していると言える。前者において,自治体は強い購入権限を持ち,厳しい予算制約の下での市場の失敗がみられた。後者において,インフォーマルケアの現金給付化に伴い,市場における消費者選択の保障と,管理主義的な利用者保護との間でバランスを取る公的介入の範囲や水準が問われている。

  • ―介護保険制度―
    須田 木綿子
    2017 年 9 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     我が国において最初に公的対人サービスを民営化した介護保険制度を題材に,そのような民営化が市区町村を単位とする地域に及ぼす影響を,サービス供給組織の広域化との関わりにおいて検討した。調査対象は,東京都内で住民の所得水準が異なる2つの区で活動する介護保険指定事業者であり,2005年と2012年に実施した調査のデータを用いた。その結果,低所得の住民が多く居住する地域では,広域型のサービス供給組織と共存しながら地域密着型のサービス組織が重要な役割を果たしており,後者のようなサービス供給組織を支援することは,この種の地域の重要課題であると考えられた。いっぽう住民の所得水準が高い地域ではサービス供給組織の広域化が進み,地域との密着感は薄く,クリームスキミングが行われている様子も観察され,この種の地域では,地方自治体の影響力が低下していることをふまえたうえでの政策展開が求められることを指摘した。

投稿論文
  • 金子 光一
    2017 年 9 巻 2 号 p. 113-122
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     本研究は,ロバート・オウエン(Robert Owen)の「結束と相互協力」(unity and mutual co―operation)の思想に着目し,オウエンが有した「相互義務」と「権利付与」の見解とその特質について明らかにしたものである。地域社会で暮らす住民全体を一つの「団体」と捉え,住民一人ひとりに地域に対する帰属意識や「愛着」をこれまで以上にもたせると同時に,コーポレーション(co―operation)としての地域社会に住民が積極的に参加していくための方策を探る上で,オウエンの「結束と相互協力」の思想は重要な意味をもつものと考える。まず,オウエンが執筆した出版物,講演の記録等から,「相互義務」や「権利付与」に関する言説を抽出し,市民社会の明確な「権利・義務関係」とは異なるオウエンの見解を浮き彫りにした。次に,オウエンが「人類生存の合理的状態」(the rational state of human existence)を実現するために重視した「結束と相互協力」と,21世紀に入り,公的な政策の議論で広く用いられている「コミュニティ結合」(community cohesion)との関連性を明らかにした。

  • 小野 太一
    2017 年 9 巻 2 号 p. 123-134
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     大河内一男は晩年,所謂「大河内理論」に基づく社会政策を「縦」「消費」「横」に広げることで「総合社会政策」へと転回させた。その際,社会政策と社会保障,公的扶助,社会福祉等を「働く」ことを鍵に総合化したが,背景には個人の自立と自己責任,その表象としての「働く」ことこそ人間存在の根幹であるという価値観が一貫してあった。彼は同時期に会長を務めていた社会保障制度審議会において総合勧告をまとめる機会はなかったが,逝去後の80年代半ば以降は,彼の視点に引き付ければ「労働力の保全・培養」に係る旧来的社会政策と社会保障に係る施策を「総合社会政策」の下で一体的に進める有効性が高まった。雇用及び社会保障政策の今日的な課題を総合的に検討する上で,「総合社会政策」への転回やその背景にある人間観や発想は有意義であり,また大河内,及びその後の隅谷三喜男時代の制度審の評価やそれ以降の取組の分析は有効な作業である。

  • ―一自治体の事例調査に基づく考察―
    後藤 玲子
    2017 年 9 巻 2 号 p. 135-146
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,福祉における「情報の壁」,すなわち,知らされないことによる制度へのアクセス障害の実態と原因を一自治体の事例調査によって探索的に解明することである。調査対象は介護福祉及び児童福祉に関する自治体広報で,自治体職員への書面調査及び面接調査並びに自治体ホームページ調査により,住民ニーズが大きいのに自治体ホームページで容易には見つけられない福祉情報が多いこと,自治体職員は広報内容の不十分さではなく広報媒体の不十分さを問題視する傾向にあること等が分かった。その原因は,住民の情報ニーズと広報実態とのギャップを組織的にチェックし改善する仕組みがないこと,及び,担当職員の認知バイアスゆえに現状維持が優先されたり手段の目的化が生じてしまうことにある可能性が示唆された。当該ギャップの自覚を促し,広報内容を系統的に改善するための組織体制を構築することが必要だと考えられる。

  • 藤井 渉
    2017 年 9 巻 2 号 p. 147-158
    発行日: 2017/11/10
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル フリー

     本論は,養護学校義務化が障害者福祉政策に与えた影響について検証を行い,今後の障害者福祉政策の課題について指摘したものである。その結果,養護学校義務化の影響を受ける1990年代では,養護学校卒業者と障害者福祉施設の増加数に関連が見られることを発見した。その背景には,養護学校義務化は卒後の問題を顕在化させ,それが障害者福祉政策の課題として突きつけられていた事情が考えられた。そして,今後の障害者福祉政策の課題について,障害者の高齢化やいまだ顕在化してこなかった重度障害児の存在などを指摘した。

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