本稿の課題は,イギリスにおける「第三の道」以降の「福祉の契約主義」に焦点をあてて保育の市場化をジェンダーの視点で考察することである。それは,主として家庭で女性が担ってきた保育(ケア)の社会化が市場化によって推進されることによって,構造的にいかなる問題が生じているかを明らかにすることである。以下,まずジュリアン・ルグランによって提唱された「準市場」の理論的性格を明らかにする。次に1997年以降のニューレイバーのもとで保育政策が子どもの貧困対策として推進されたことを考察する。それは社会的投資アプローチとワークフェアを二つの柱として,市場化によって推進された。2010年以降の緊縮財政下においても同様であり,Open Public Services White Paper (2011)に見られるように,保育の市場化はより急速に進展した。最後に,ケアの市場化がジェンダー不平等を深化させたことを明らかにする。