現代中国を対象とした意思決定過程の日中比較研究は少なく, 現代中国の急速な発展を考慮するとこのような研究は極めて重要である. 本研究は, 中国人, 在日中国人と日本人のプロジェクトマネジメント経験者における意思決定関連構造, および意思決定行動に重要な影響を与えるプロジェクト成功·失敗認知構造を, アンケート調査, ISM関連付けテスト, および個別インタビューにより, 比較検討した. アンケート調査の結果, 日中両国において, 個人要因(パーソナリティ), プロジェクトの成功・失敗認知要因, 意思決定考慮要因, PM能力, リーダーシップ), 社会要因(環境文化要因, 人間関係要因), および意思決定行動間の関連性には, 共通の関連性が存在するとともに, 中国人は倫理観を重視し, 日本人は集団主義を重視し, 在日中国人は中国人・日本人の特徴を併せ持つという, 意思決定行動の差異も示唆された. さらに, プロジェクトの成功&・失敗認知要因が共通して意思決定行動に重要な影響を及ぼしていることが示されたため, 次にアンケートデータからニューラルネットワークを用いて, 3群の代表的な仮想人物の関係行列を作り, ISM法で各群の代表的なプロジェクト成功・失敗認知構造を明らかにし, 比較検討した. その結果, 3群間の共通性は成功認知構造において多く, 失敗認知構造において少なかった点と, 中国人では外的要因が, 日本人では内的要因が成功・失敗認識構造において重要である点が両群の相違点として示唆された. また, 在日中国人は中国人と日本人の両特徴を併せ持つ結果が得られた.
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