情報システム導入プロジェクトを成功させ,成果を生むためにには,立ち上げ段階で設定するプロジェクト目標の品質が極めて重要である.近年,社内情報システム導入プロジェクトの企画段階で,プロジェクト戦略の立案や目標の明確化に,バランス・スコアカードを活用した要求分析が行われている.しかし,バランス・スコアカードの業績評価の視点は,要求の構造性や網羅性,必然性が曖昧で,必ずしも,その視点で十分か否かの保証がなく,要求の優先度の誤り,重要な要求の視点が欠落するなどのリスクがある.さらに,目標設定において,手段が目的化するなどのリスクにより,社内情報システム導入の価値を著しく低下させるリスクもある.そこで,本文では,これらの問題に対処するため,従来から,ISO/IEC JTC1/SC7 WG6で進めてきた,システム品質評価のモデルを拡張して,考案した「3次統合価値モデル」の概念について紹介し,バランス・スコアカードとの比較に基づく,このモデルのプロジェクト目標設定における有効性について述べる.
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