ソフトウェア開発プロジェクトには多くのリスクが内在している.そのため, リスクマネジメントを適切に行い, リスクの具現化を防ぐことがプロジェクトの成否に大きく関係している.代表的なプロジェクトマネジメントシステムであるPMBOKにおいても, リスクマネジメントの章が設けられている.しかし, PMBOKでは様々な業界や多種多様なプロジェクトを想定しているため, リスクマネジメントの枠組みを示すにとどまっている.一方, ソフトウェア開発のプロジェクトに特化して, リスクマネジメントを扱っている文献もいくつか存在する.しかし, それらは歴史的経緯が違うため, PMBOKの体系に沿っているわけではない.そこで, プロジェクトマネジメントシステムのデファクトスタンダードとなっているPMBOKを中心に, その他のリスクマネジメントシステムをPDCAサイクルモデルの観点から比較し, さらに他業種での取り組みを調査して, ソフトウェア開発プロジェクトにおけるリスクマネジメントのあり方を考察した.その結果, PMBOKで不足していると思われる内容や相違点を抽出することができた.また, "もれ"の少ないリスクの特定方法を検討する必要があること, 計画時と開発実施時ではリスクの定量化や対応策の策定に違いがあること, リスクマネジメントのプロセスを他の開発プロセスに組み込む必要があること, 作業の省力化に取り込む必要があること, などの課題があることが分かった.
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