SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
5 巻, 2 号
SPring-8 Document D2017-012
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
Section A
  • 下條 竜夫, 森田 朝陽, 本間 健二, 為則 雄祐
    2017 年 5 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    炭酸分子の酸素1s、炭素1sしきいエネルギー領域の吸収スペクトル測定を光電子-光イオン-光イオン同時測定法を利用して行った。得られたスペクトルには1s→π*由来と考えられるピークがあらわれたが、水および二酸化炭素の単体分子からのシグナルによる寄与がきわめて大きく、炭酸分子由来のシグナル強度も弱かったため、明確なピーク位置は確定することはできなかった。
  • 岡田 京子, 松下 智裕, 八方 直久, 林 好一, 櫻井 吉晴
    2017 年 5 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    核共鳴散乱法を利用した鉄の蛍光X線ホログラム測定を初めて試みた。この測定では、α-Fe2O3単結晶試料に57Feの共鳴エネルギーの14.4 keVのX線を照射し、試料から放出されるX線/γ線を鉄のK蛍光X線の6.4 keVと散乱X線/γ線の14.4 keVに分離し、さらに、素過程の継続時間の差を利用して電子散乱起源と核共鳴散乱起源に分離する。そこで、X線のエネルギーを6.4 keVのみに弁別する方法として、(1)試料と検出器の間に分光器を設置して目的のエネルギーのみを選択する方法と、(2)試料から放出されるX線/γ線の全てを直接、検出器に入れ、検出器のエネルギー分解能を利用してエネルギー分離をする方法を試みた。(1)、(2)共に、試料からのFe-K蛍光X線ホログラムを取得することに成功した。(2)の方法は今までは行われておらず、今回、新たなFe-K蛍光X線ホログラム計測法を確立できた。
  • 中澤 知洋, 国分 紀秀, 中野 俊男, 佐藤 悟朗, 萩野 浩⼀, 小⾼ 裕和, 渡辺 伸, 三宅 克馬, 小林 翔悟
    2017 年 5 巻 2 号 p. 158-160
    発行日: 2017/08/18
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    硬X線、ガンマ線による天体観測の革新を図るために、Si両面strip検出器(Double-sided Si Strip Detector ; DSSD)を用いた観測装置の開発が進められている。本実験では我々が浜松ホトニクス社と開発したDSSDを5-80 keV帯域での撮像分光検出器として使うにあたり、信号応答の場所依存性を調べた。具体的には、30 keVのX線ビームを6 μm×6 μmにコリメートしてスキャンすることで、strip間でX線が相互作用した時に生じる、電荷分割イベントの定量的な評価を進めた。strip間での電荷分割イベントが生じる領域サイズを実測したところ、光電子の飛程およびSi内でのelectron-holeキャリアの熱拡散を組み合わせたモデルでよく合うことを確認した。同設計のDSSDは実際に「ひとみ」衛星に搭載されて軌道上で正常に動作した。
  • 安田 馨, 松井 文彦, 松下 智裕, 前島 尚行, 松井 公佑, 北川 哲, 堀江 理恵, 石井 良, 藤田 將義, 大門 寛
    2017 年 5 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    鉄の多結晶試料に微小径の放射光ビームを照射して二次元光電子回折法・光電子分光法による解析を行うことによって、多結晶材料の個々の微結晶について、その結晶構造・結晶方位・磁気構造を同一分析器で超高真空の環境を維持したまま観察することに成功した。この手法を用いれば、異なる測定装置への試料搬送による物性変化を防ぎながら種々の物性評価ができ、今後の新たな材料評価手法として有用であることが示せた。
  • 南 幸男, 本多 定男, 中野 和彦, 牧野 由紀子, 早川 慎二郎, 二宮 利男, 青山 光輝, 八木 直人
    2017 年 5 巻 2 号 p. 164-166
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    犯人が無意識に遺留する微細証拠物件は、犯行を立証する証拠として非常に重要であるが、中でも繊維は殺人のみならず迷惑防止条例違反等、極めて多くの罪種に関係している。現在、法科学分野において、形態観察、顕微分光法、顕微FT-IR、顕微ラマン分光法等による分析等が行われているが、繊維が無染色のものについては異同識別が困難となる場合がある。SPring-8の放射光によるX 線小角散乱法を用いることで、非破壊的にナノスケールでの繊維の周期構造や配向性等に関する情報が得られると、繊維鑑定の識別能力の向上が大きく期待できる。
  • 牧野 由紀子
    2017 年 5 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2017/08/18
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     SPring-8の放射光による特徴的な分析手法を検討し、犯罪捜査に役立つ新たな化学情報を引き出すのが本研究の目的である。
     本研究は、日本で乱用問題の深刻な不正薬物である覚醒剤及び原料物質エフェドリン類に関して、SPring-8の放射光による特徴的な化学情報獲得を目指した。正規に市販され製法既知の覚醒剤原料エフェドリンを対象とし、BL02B2で結晶構造の製法による差異が測定可能か否かについて実験した。しかし、Rietveld法による結晶構造解析の結果、原料・製造法の異なるエフェドリン類の結晶構造に明瞭な差異は認められなかった。
  • 川上 彰, 池本 夕佳
    2017 年 5 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    赤外光検出器の検出効率および応答速度の向上を目指して、我々は光検出器におけるナノアンテナ構造を提案している。しかし単一のアンテナで受光できるアンテナの実効面積は、波長の二乗程度と小さく、一対策としてのアンテナのフェーズドアレイ化は重要な課題である。そこで中赤外光領域のナノスロットアンテナを設計・作製し、そのアンテナの実効面積の評価を行うと共に、BL43IRの赤外顕微分光による光ナノアンテナの高解像度イメージングを基にアンテナ受光領域の形状評価を試みた。
  • Chia Hung Lai, Wen-Bin Wu, Chi Liang Huang, Youichi Murakami, Jun Okam ...
    2017 年 5 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    We have studied the magnetic and orbital orderings in Cu 3d orbitals of KCuF3 by using Cu K-edge resonant X-ray scattering. For the orbital reflection (1 0 5) at quadrupole transition, however, no cleartransition was observed about 40 K. This shows that the coupling between spins and orbitals in Cu 3d orbitalsis small in type-a orbital ordering of KCuF3.
  • 平野 辰巳, 高松 大郊, 小西 弘明, 谷田 肇, 星野 真人, 上杉 健太朗, 内本 喜晴, 小久見 善八
    2017 年 5 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    リチウムイオン電池のレート特性を支配する現象の解明を目指し、リチウムイオン反応分布の二次元および三次元可視化計測法を検討した。LiFePO4正極の二次元可視化から、集電体側に比べてセパレータ側で反応が進行していることがわかった。X線吸収分光法とラミノグラフィー法の併用による三次元可視化を検討し、電極断面毎のリチウムイオン反応分布の可視化に成功した。しかし、電極断面の上下におけるリチウムイオン反応分布の差異までは識別できていないことが判明した。
  • 佐藤 龍, 櫻木 俊輔, 石川 創一郎, 水牧 仁一朗, 佐藤 徹哉
    2017 年 5 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    超高真空中のガス中蒸発法において作製された清浄表面(ガス、有機修飾剤の吸着がない)を有するAuナノ粒子に発現する強磁性の起源を探るために、表面修飾のないAuナノ粒子に対してBL39XUにおいてX線吸収分光(XAS)およびX線磁気円二色性分光(XMCD)測定を行った。その結果、XASスペクトルから5dあるいは6s軌道に空き準位が増加していることが分かったが、XMCDスペクトルにはAuフォイル(バルク)と比較して有意な差が観測されなかった。これまでAuナノ粒子に対して密度汎関数理論を用いた計算から6s電子のスピン分極を起源とする強磁性発現のモデルが報告されていることを考慮すると、5d、6s電子の両者がスピン偏極してXMCD信号が相殺された可能性が考えられる。今回の測定では5d電子と6s電子の分極を分離して観測することができないため、Auナノ粒子の強磁性起源を特定するには至らなかった。
  • 田代 孝二, 山元 博子, 吉岡 太陽, 田原 大輔
    2017 年 5 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    非晶性PET試料の溶媒誘起結晶化過程における階層構造発展過程を透過赤外スペクトル、広角X線回折および小角X線散乱同時・時間分解測定によって追跡し、結晶格子の形成ならびにラメラ積層構造の形成の様子を詳細に調べた。
  • 本多 定男, 橋本 敬, 青山 光輝, 八木 直人
    2017 年 5 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     犯罪現場において犯人が無意識に遺留する微細証拠物件は、犯行を立証する証拠として非常に重要であるが、その中でも繊維は殺人のみならず傷害、交通事犯、迷惑防止条例違反等、極めて多くの罪種に関係している。法科学分野においては、微細な証拠であればあるほど、再鑑定の必要性から証拠物をそのまま残す非破壊的な鑑定手法が望まれる。さらに、無染色の繊維については情報が少なく、異同識別が困難となる場合がある。
     そこで、SPring-8 の放射光を利用した小角/広角散乱分析を行えば、非破壊的にナノスケールでの繊維の周期構造や配向性等に関する情報が得られるため、繊維鑑定の識別能力の向上が大きく期待できる。単繊維の標準試料等を非破壊で分析し、データバンクを構築した。
Section B
Section C
SACLA
  • 松田 晃孝, 伏谷 瑞穂, 遠藤 友随, 樋田 裕斗, 彦坂 泰正, 菱川 明栄
    2017 年 5 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2017/08/17
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    X線強レーザー場における原子分子の非線形光学応答の理解を目的として、XFELにおける電子−イオンコインシデンス分光法の開拓を行った。磁気ボトル型分光器を用いたコインシデンス計測系を導入し、Ar/Ne混合ガスを標的として評価を行った。与えられた実験条件下で、XFELによって生成したAr L殻およびNe K殻空孔の崩壊に伴うオージェ電子と、対応するイオン種 (Arp+,Neq+) の全コインシデンス事象における真のコインシデンス事象は98%程度と見積られ、本分光法の有用性が示された。
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