SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
9 巻, 6 号
SPring-8 Document D 2021-016
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
Section A
Section B
  • 銭谷 勇磁, 加納 学, 鬼頭 俊介, 菅原 健人, 澤 博
    2021 年 9 巻 6 号 p. 434-437
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     ペロブスカイト型結晶構造を有する Ba(Zr,Y)O3-δ (以後、BZY)は、500~700°C の温度領域において10-3 S・cm 程度のプロトン (H+) 伝導性を示すことが知られている[1]。我々は、結晶粒界が存在しない BZY エピタキシャル薄膜を作製し、水素雰囲気中で熱処理を施すことにより、高いプロトン伝導特性を見出した (0.1 S/cm@600°C, 0.01 S/cm@20°C, Ea = 0.01 eV)。本特性は、従来の酸素サイト間をプロトンがホッピングする伝導機構では説明出来ない。またバルクの BaZrO3(以後、BZO)単結晶も同処理によって高伝導状態になることが確認できた。本研究では BZY および BZO 薄膜と BZO 単結晶における伝導特性の異なる試料間での結晶構造の差異を明らかにすることで、新しいプロトン伝導特性と結晶構造の因果関係を明らかにすることを目的とした。
  • 鷺谷 智, 西川 由真, 城出 健佑, 大江 裕彰
    2021 年 9 巻 6 号 p. 438-442
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     本報告では実用上用いられる複数のゴムやフィラー種の組み合わせからなる数多くのゴム組成物に対し、小角X線散乱によりゴム中のフィラー凝集構造を評価した。その結果、同一粒径グレードのカーボンブラック(CB)では 15–420 nm の空間スケールにおいて、原料ゴム種によらず、同一のフィラー凝集構造となった。シリカに関しては、ゴム分子鎖末端の変性により凝集塊直径が小さくなる効果を確認した。
  • 平野 辰巳, 村田 徹行, 松原 英一郎, 菖蒲 敬久, 城 鮎美, 高松 大郊
    2021 年 9 巻 6 号 p. 443-446
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     車載用リチウムイオン実電池(LIB)のサイクル時の劣化要因として、高い電流レートにおける電池内部の温度上昇、リチウムイオンの正負極間移動にともなう電極の膨張・収縮による応力などが指摘されている。そこで、小型のLIB内部における温度・応力分布を同時に評価する手法を検討した。その結果、高レートな繰り返し充放電による温度上昇(25℃ 以上)で軸方向に発生した引張方向の応力変化(31 MPa)が測定できた。一方、解析した内部温度が表面温度より低いことから解析手法に課題があることが判明し、半径方向に発生する応力を考慮する必要性が示唆された。
  • 駒場 慎一, 久保田 圭, 多々良 涼一, 福西 美香, 伊集院 泰行, 水田 浩徳, 安野 聡
    2021 年 9 巻 6 号 p. 447-449
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     リチウムイオン電池は充電時に負極材料表面に形成される不動態被膜によって電解液の還元分解を防いでいる。しかし、Si 系電極では Li 挿入に伴う Si の膨張、微細化が被膜の劣化を招くとされている。本研究では、硬X線光電子分光法を用いて、架橋型ポリアクリル酸ナトリウムを結着剤として使用した Si 系負極上に形成される表面被膜を分析し、放電時の上限カットオフ電位の違いによる表面被膜への影響を調査した。その結果、放電時の上限カットオフ電位を低くすると、充電時に形成された表面被膜の溶解が抑制され、被膜が安定に保たれることが示唆された。
  • 三輪 祥多郎, 鷺谷 智, 城出 健佑, 西川 由真, 中村 亮太, 大江 裕彰
    2021 年 9 巻 6 号 p. 450-454
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     X線コンピュータトモグラフィー法 (CT) と超小角X線散乱法 (USAXS) によって、ゴム組成物中のシリカの階層構造を評価した。CT 測定ではマイクロメートル領域のシリカ凝集体を3次元で可視化し、定量解析を行った。結果より、マイクロメートル領域に存在するシリカ凝集体は、配合した全シリカの数%程度であることが確認された。USAXS 測定では未変性および変性ポリマーを用いてシリカの散乱曲線を得た。散乱曲線のフィッティング結果から、ポリマーの末端変性によりシリカの凝集体サイズが減少したことが確認された。凝集体サイズの減少率の比較より、マイクロメートル領域よりもナノメートル領域の方が末端変性効果は大きいことが示唆された。
  • 城出 健佑, 西川 由真, 大江 裕彰, 鷺谷 智
    2021 年 9 巻 6 号 p. 455-461
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     本報告では工業的に用いられる各種配合剤や複数のゴム種をターゲットとした。ゴム組成物に対し亀裂先端箇所の SAXS/WAXS 同時測定を行った。SAXS ではフィラー階層構造、WAXS ではゴム伸長に伴う結晶化を評価した。各種配合剤や複数のゴム種により、これらがどのような構造変化をするか調査した。SAXS ではゴム種が異なっても亀裂からの距離によらずフィラーの階層構造に変化はなかった。WAXS では、伸長量増大に伴い亀裂先端の結晶ピーク強度が変化した。また、その変化は配合剤の種類により異なり、配合剤によって伸長に伴う結晶化の進み方が異なることが示唆された。
  • 鷺谷 智, 城出 健佑, 西川 由真, 大江 裕彰
    2021 年 9 巻 6 号 p. 462-466
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     タイヤ用ゴム組成物の引裂き試験および摩擦試験における変形を、X線イメージング法を用いて解析した。得られた透過像に対して、デジタル画像相関(DIC)法を適用することにより、歪み分布を定量化する事ができた。引裂き試験では亀裂先端の歪み集中を、摩擦試験では摩擦のヒステリシス項の由来となる突起乗り越しに伴う歪みを定量化できた。
  • 西田 真輔, 佐々木 宏和
    2021 年 9 巻 6 号 p. 467-470
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     半導体デバイスにおける基本構造の一つとして、絶縁膜/半導体接合が挙げられる。この接合界面における化合物半導体由来の酸化物層評価が半導体レーザの信頼性を向上させるために非常に重要となる。本研究では、転換電子収量法の Al2O3 膜中における Ga K 吸収端の情報深さと Al2O3/GaAs 界面の Ga2O3 層の解析を試みた。Al2O3 膜中での Ga K 吸収端の情報深さは 170 nm であることを明らかにできたが、評価試料の Al2O3/GaAs 界面の Ga2O3 層を検出することは出来なかった。
  • 後藤 和宏, 井上 明子, 桑原 鉄也
    2021 年 9 巻 6 号 p. 471-475
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     銅(Cu)に鉄(Fe)を添加した合金を対象として、Cu 中で固溶している Fe と単体析出している Fe の存在比を定量的に評価する方法として、Fe の K 吸収端 XAFS による解析を検討した。固溶と析出が混在している試料から得られたスペクトルは、急冷凝固により Fe を固溶させた試料と純 Fe の試料のスペクトルを足し合わせた形状になることを確認した。そのスペクトルについて、固溶と純 Fe の2成分を仮定したフィッティング解析により算出した固溶比率が増加すると導電率が低下する相関が認められた。
  • 鷺谷 智, 城出 健佑, 西川 由真, 中村 亮太
    2021 年 9 巻 6 号 p. 476-479
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     タイヤ用ゴム組成物の摩擦時における変形挙動から摩擦を理解することを目的に、X線イメージング法を用いて摩擦時のゴムの変形を観察した。得られた透過像に対し、デジタル画像相関法(DIC)を適用することにより、歪み分布を算出でき、詳細な解析が可能となった。その結果、摩擦力の時間変化に伴いせん断歪みも変化することが分かった。さらに、エネルギーロスの高い一部試料に関しては、摩擦力に対し歪みが遅れて生じていた。これは、摩擦力がエネルギーロスに由来する「摩擦のヒステリス項」と関係していると考えられる。
  • 舟本 三恵, 岸田 佳大, 石井 裕基, 米山 弘亮, 梅本 和彦, 谷垣 健志
    2021 年 9 巻 6 号 p. 480-485
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     樹脂溶着界面の破壊メカニズムを明確にするために、ガラス繊維強化ナイロン6樹脂の溶着試験品について、溶着界面近傍の結晶構造分布、引張負荷前後のひずみ分布、及び破壊起点の可視化をマイクロビームX線回折法とX線透過像計測により評価した。その結果、結晶構造分布とそれに対応したひずみ分布の存在を明らかにした。またX線透過像計測により破壊起点も明瞭に観察でき、溶着樹脂界面の破壊メカニズムを推定する有用な知見が得られた。
Section C
  • 太田 昇, 関口 博史
    2021 年 9 巻 6 号 p. 486-489
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     我々は、BL40B2 ビームラインにおいてX線小角散乱装置の小角分解能向上を行った。そのために長さ 10 m の実験ハッチ内に新たに真空パスを設置し、試料から2次元検出器までの距離でおよそ 8 m の小角X線回折装置を設定した。バックグラウンドの低減が必要になったので試料上流のX線透過窓としてカプトンと窒化シリコンの2種類について検討を行った。このうちの窒化シリコンを用いた計測システムにおいて、フィルムを用いた試験測定を行った。これらの結果、6.5 keV のX線エネルギーを用いたとき
    Q = 0.007 nm-1 まで小角分解能が向上したことを確認した。
  • 保井 晃, 池永 英司, 中村 哲也
    2021 年 9 巻 6 号 p. 490-495
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
     磁性体中の磁化分布解析を可能にする放射光計測技術である、磁場印加下での硬X線光電子分光 (HAXPES) 測定法の開発を行った。磁場下での光電子分光は、磁場により光電子の飛行軌道が影響を受け、検出自体が困難となる問題がある。そこで、本研究では高い光電子エネルギーを有する HAXPES を用い、実効的に磁場の影響を低減することで磁場下の HAXPES 計測技術の確立を目指した。表面磁束密度 400 mT のネオジム永久磁石を用いた磁場印加機構を Fe/Pt/Fe 磁性薄膜試料に適用し、磁場下の電子状態観測に成功した。この結果は実デバイスへの応用実現に必要な要素技術として同手法の確立に繋がる。本計測技術を応用することで、スピントロニクス材料等の磁性多層膜中の埋もれた界面における磁化分布と、デバイス機能発現に深く関わる界面電子状態の同時解析が可能になることが期待される。
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