保健医療福祉科学
Online ISSN : 2434-5393
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7 巻
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原著論文
  • 稲木 あい, 張 平平
    2018 年 7 巻 p. 1-6
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本研究は日中両国の地方都市に住む高齢者を対象に、地域高齢者が考える人生の最期の迎え方に対する認識を明らかにし、終末期療養の現状と課題の把握及び、両国の違いについての考察をすることを目的とし、質問紙調査を実施した。その結果、日本では高齢者の孤立化や孤独死増加の危惧、終末期療養ニーズの潜在化が、中国では在宅療養を支援する体制が不十分であるという現状が明らかになった。また、死への不安と恐怖感を表す死生観の比較では、日中それぞれの文化的・社会的要素が、「死」について考えるきっかけに影響を及ぼしていることが見出された。更に、日中双方で「自宅」での終末期療養ニーズが高いということが明らかになった。その中で、日本では「周囲の者に迷惑をかけない」、中国では「経済的な不安や身体的な苦痛への心配」という文化的特徴が浮き彫りとなった。それぞれのニーズに沿った社会支援と体制整備の必要性が示唆された。

  • 中込 洋美, 横山 惠子, 添田 啓子, 延原 弘章
    2018 年 7 巻 p. 7-13
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

    目的:中堅看護師の「いきいき」働くに至るまでのプロセスから、「いきいき」と働くための要素を明らかにし、中堅看護師のための教育内容への示唆を得る。

    方法:役職を持たない臨床経験5年目以上の、上司が「いきいき」働いていると認めた30歳代の看護師を対象に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。

    結果:9名の面接から、カテゴリ14が抽出された。中堅看護師の「いきいき」働くための要素は、【立ち戻れる原点】【両立の助け】【乗り越える力】【組織の期待を自覚】【自ら求める学び行動】、【中堅としての役割認識の獲得】【将来へのキャリアビジョン】【責任とやりがいをもった組織への参画】【看護実践力の向上】【看護の手応えと魅力の自覚】【リフレクションの力】【看護を楽しむ】であった。以上から、中堅看護師が「いきいき」働くために必要な教育内容が示唆された。

研究報告
  • ―基本特性と測定結果との関連および信頼性の検討―
    髙橋 喜代子, 萱場 一則
    2018 年 7 巻 p. 14-19
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

    [目的]健常中高年を対象としたつけまつげの視覚的指標を作成し、回答者の背景因子との関連および信頼性の検証を行うことを目的とした。[方法]運動教室参加者の50歳以上の男女134名を対象に写真によるつけまつげの視覚的指標の原案を作成し、清潔・親切・真面目の3項目の印象について、許容できる範囲を8段階評価で回答するよう求めた。尺度得点(0〜7)と3項目の印象および性別、年代別、環境別、経験別にMann-WhitneyのU検定とKruskal-Wallis検定を用いて解析した。4週間後に2回目の調査を行い、信頼性を検討した。[結果]調査回答者は114名であった。それぞれの尺度得点の平均値は3.6から4.1、標準偏差は1.4から1.7であった。女性で、年代が若く、身近につけまつげを装着している人がいて、自分で装着経験がある人ほど、許容度が統計学的有意に高かった。再テストにおけるSpearmanの相関係数は0.419から0.464であった。[結論]健常中高年を対象としたつけまつげの視覚的指標を作成した。つけまつげに対する許容度は、回答者の背景因子と有意に関連していた。中程度の信頼性係数がみられた。

  • 櫻井 香織, 臼倉 京子
    2018 年 7 巻 p. 20-25
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本研究は、常に選択の自由がある状態での作業課題実施が気分およびストレスに及ぼす影響を検証することを目的とした。常に選択の自由がある状態に設定できる作業課題としてぬり絵を用い、色を自由に塗る群を選択群、黒のみで塗る群を非選択群とした。POMS2短縮版と唾液アミラーゼ活性値を用いて課題前後の変化を評価した結果、POMS2短縮版において、選択群で「怒り-敵意」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」の尺度得点が有意に低くなる傾向が、「混乱-当惑」の尺度得点が有意にやや低くなる傾向がみられた。非選択群では「抑うつ-落込み」「活気-活力」の尺度得点が有意に低くなる傾向がみられた。唾液アミラーゼ活性値については有意差がみられなかった。POMS2短縮版の結果から、ぬり絵では色の選択の自由がある方がネガティブな感情を軽減させる効果が得られる可能性が示唆された。唾液アミラーゼ活性値に関しては、統制条件を更に検討する必要があると考える。

  • 田上 豊, 山口 乃生子, 星野 純子, 會田 みゆき, 延原 弘章
    2018 年 7 巻 p. 26-31
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本研究は、埼玉県を対象として、市町村単位において在宅での看取りの地域差を生じさせている要因を明らかにすることを目的とした。

     本研究の結果、埼玉県における在宅での看取りの割合は市町村間でばらつきが大きく、自宅死亡割合は県東南部、老人ホーム死亡割合は県西部で多いことが明らかとなった。在宅での看取りの地域差を生じさせている要因として、自宅死亡割合では「都市化」に関わる要因が関与しているものと推察されたが、県西部の中山間地においても自宅死亡割合の市町村があることから、地域での看取りに対する意識や取組体制、死亡に至るプロセスにおけるサービス提供状況等に関する研究を行っていくことが必要である。

     また、在宅での看取りに関し、医療介護サービスの提供体制や提供量との関係では、自宅死では相関のある項目はなく、老人ホーム死では老人ホーム定員数との相関が認められた。

  • 唐沢 博子, 鈴木 玲子, 常盤 文枝, 山口 乃生子, 大場 良子, 宮部 明美
    2018 年 7 巻 p. 32-39
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     医療機関で中堅看護師に実践されている現任教育の実態について、1都3県に所在する病床数100床以上の医療機関を対象に、無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。常勤者に占める中堅看護師の割合は平均36.5%だった。中堅看護師に期待する能力30項目の平均値は2.1(SD,0.9)で、実習での学生の学習を促進する力や研究推進力を期待していた。研修は中央値8件/年実施され、総研修時間は中央値18時間/年だった。研修目的は、看護実践能力やマネージメントなど日々の看護ケアに活用できる内容が実施されていた。現任教育運営責任者は、看護実践に即した研修内容を組むように工夫していたが、研修意欲の低さの他、研修時間の確保や研修内容等、研修運営を課題としていた。医療機関の特性に応じた中堅看護師の現任教育のプログラムの確立が期待された。

  • ―事例検討を通して―
    新井 麻紀子, 徳本 弘子, 黒田 るみ
    2018 年 7 巻 p. 40-45
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

    本研究では繰り返し行う熟練教員との事例検討の中で新人教員が経験した事柄や事象を再構築しどのように教育的思考と手段を変化させるかといった視点に着目して新人教員の教育的思考獲得過程を明らかにすることを目的としている。研究者が主催する公開講座に参加し事例検討によるリフレクションを継続して1年間行った教員経験1〜3年未満の者8名を対象として半構造的面接法を実施し質的帰納的に分析した。その結果新人看護教員の教育的思考と手段の獲得過程とは、【不消化な経験の整理】【事例を基に教育の視点と手段のシミュレーションを繰り返し発見する】【看護教員としての視点や手段を使って学生の変化を確認】の3段階であると収束された。新人教員は教育実践で何が有効なのか判断する視点と教育的思考が獲得されていないため多くの困難感を感じている。したがって新人教員が教育的思考と手段を獲得するためには熟練教員の支援を得ることの必要性が示唆された。

  • 鈴木 康美
    2018 年 7 巻 p. 46-52
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     目的:看護実践のリフレクションを導入したことによる組織の変化を、看護管理の視点から明らかにし、組織変革の効果を検討する。方法:インタビューガイドをもとに半構成的面接を行い,データをM-GTAにより分析した。対象者:A大学2病院の看護部に看護実践のリフレクションの導入、支援に参加した看護部長、副部長5名。結果:逐語録を分析した結果17概念、4カテゴリー、1コアカテゴリーが生成された。看護部長らは、〈言語化されず、共有しにくい看護実践〉を改善するため、≪看護実践を言語化できる人材育成≫を目指して、【師長・スタッフに考えさせる戦略的な関わり】【リフレクションの導入と定着への支援】を実施し、その結果【看護を語る組織文化づくり】が育まれ、【看護管理が活性化】した。看護部長らが、看護実践のリフレクションを組織に導入した経過は、レビンの組織変革の3段階に沿っていた。

実践報告
  • 新井 利民
    2018 年 7 巻 p. 53-58
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本報告は、埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科および社会福祉子ども学科の専門科目「社会福祉専門演習」で4年間にわたって取組んだ、「ふるさと支援隊」の活動内容を紹介し、その成果と、地域社会で学生が学ぶ上での留意点や課題について検討を行ったものである。この取組では、埼玉県農林部の委託を受け、埼玉県ときがわ町において様々な地域行事への参加・協力と、学生自らが設定した研究テーマに基づいた調査活動を行った。その中で学生は、地域の具体的な事象から学ぶ姿勢を獲得し、活動テーマを深め、卒業研究においても連続性を持って取組む者も見られた。教員側の留意点としては、学習者の「当事者性」の確保と「責任」を自覚させること、教員・学生間において「目標」と「時間」を共有すること、課題解決を目指しつつも主体は地域自身であることを念頭に置くこと、などを指摘した。今後も大学教育や研究において「できること」と「すべきこと」と向き合いながら、地域社会での教育活動を推進していきたい。

資料
  • 林 裕栄, 武田 美津代, 張 平平, 畔上 光代, 水間 夏子, 木村 伸子, 福田 彩子
    2018 年 7 巻 p. 59-65
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     看護学生と地域高齢者との世代間交流は、地域における高齢者の活躍の場の拡大及び地域の活性化につながるだけでなく、高齢者の老人力(知恵・経験・技)を看護学生に継承する上でも極めて重要である。また地域包括ケアシステムの構築が進められる中、看護学生のうちから地域を知り、そこで暮らす人々への関心をもち、交流を図っておくことも必要である。そこで本研究では、平成27〜29年度の3年間にわたり看護学生と地域高齢者との世代間交流を行い、参加した看護学生及び高齢者双方からの質問紙調査により、3年間の成果と課題についてまとめた。その結果、地域高齢者は健康維持のためにプログラムに参加しており、看護学生との交流を通して活力を得ていた。看護学生も世代間交流の意義や地域高齢者の理解など高齢者看護の基礎を学ぶ機会となっていた。双方が学びあえたことや世代間交流の継続を希望することなどが示され、本プログラムの有用性が伺えた。

  • 金 さやか, 臼倉 京子, 常盤 文枝, 星 文彦, 張 平平, 菊本 東陽, 藤縄 理
    2018 年 7 巻 p. 66-72
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     通所介護の個別機能訓練加算(Ⅱ)のSPDCAサイクルを検討するため、通所介護施設で使用されている関係書類の分析を行った。結果、本人の希望を中心に多様な視点から情報収集できるよう記録用紙が工夫されていたが、情報をもとにした課題分析の記載欄がない施設があった。また、全施設で個別機能訓練の目標設定の記載欄はあったが、利用者の課題と目標の関連がわかりにくい記録様式がみられた。個別機能訓練のSPDCAサイクルの課題としては、利用者の課題を共有して支援できるよう、利用者や家族、他職種間で共通理解できる用語の使用や、計画作成者の思考過程が見える記録様式の検討が必要と考える。

  • 大岡 華子
    2018 年 7 巻 p. 73-78
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     わが国では、高齢化の急速な進展、雇用の不安定化等、社会保障制度が無ければ、健康で文化的な生活は不可能となっており、国民が社会保障に関する知識を得るために、高校等で年金教育などが行われてきた。しかし、教えられるコマが少ない、学生の関心が低いなどの課題も指摘されている。本研究では、大学入学時点での社会保障制度に関する知識を明らかにするために、2017年4月にA大学1年生を対象に質問紙を配布し調査を行った。調査結果は、表計算ソフトを用いて単純集計を行った。その結果をもとに大学入学時の社会保障制度に関する知識や認知度を把握した。その結果社会保障の情報を得る手段として「学校」「インターネット」「テレビ・ラジオ」が多く選択されており、今後もこれらを活用したいという傾向が見られた。情報を得る手段としては、問い合わせを含めて、家族や友人など様々な入手の方法があることを教示する必要があるのではないかと結論づけた。

  • ―イラスト使用との比較―
    佐藤 安代, 岡本 佐智子, 萱場 一則, 延原 弘章, 添田 啓子
    2018 年 7 巻 p. 79-83
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     看護実践経験の少ない看護学生にとって臨床現場を具体的にイメージすることは難しい。そこで、危険予知トレーニング(KYT)において、イラストを用いた場合とロールプレイを用いた場合の危険予知の傾向を比較検討するため、ランダム化比較試験を行った。学生を無作為に2群に分け、ロールプレイ(R)群、イラスト(I)群に割り付け、術後初回歩行場面のKYTを実施した。使用したKYTシートを分析した結果、記載された危険のポイント項目数はR群で35個、I群では32個、現象からみた危険予知の傾向として、R群では、疼痛、深部静脈血栓、出血、息苦しさなどが挙げられ、可視的な情報による現象だけではなく、体の内部で起こるであろうことを想起することができた。また患者の思考および行動に起因する危険をイメージすることができた。危険要因からみた危険予知の傾向として、R群では、より多様性に富んだ危険ストーリーを考えることができた。

  • ―てんかん発作のある人とその家族の語りから―
    河村 ちひろ, 木村 真理子, 立脇 恵子
    2018 年 7 巻 p. 84-89
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本研究は、てんかん発作のある人とその家族が当事者組織に参加することの意義や意味を探ることを目的とした。てんかん発作のある本人および家族によって構成される当事者組織の運営に携わってきた人4名に対して半構造化インタビューを行い、テーマティック・アナリシスの手法にならって分析を行った。協力者の語りから帰納的に得られたテーマは①出会いと経験の共有、②役に立つ情報の取得、③新たな見方・考え方の発見、④未解決の課題、の4つであった。組織への参加が人々の生活にもたらすポジティブな効果は、他の疾患のある人々への調査と同様の結果が得られた。一方、てんかんの当事者組織では、病気の理解やよりよい治療につながる情報提供が行われることとその意義についての語りに特色があった。てんかん発作のある人々の治療と生活における障害とそれへの対処の実態に関して更なる研究が必要である。

  • 五十嵐 駿, 鈴木 玲子
    2018 年 7 巻 p. 90-95
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、手洗いに対する皮膚バリアクリームの有用性を明らかにすることである。被験者は青年男女20名で、コントロール群にはワセリン、実験群には皮膚バリアクリームを塗布した後、清拭による介入を行い、介入前後での皮膚保護効果を鱗屑、角質水分量を用いて検証した。計測は介入前、試料塗布後、清拭後の3回で、鱗屑と角質水分量の時間推移変化をパターンの分類や対応のあるt検定で比較分析した。その結果、角質水分量は塗布後から清拭後にかけての変化量で有意な差が認められ、ワセリンで大きく減少していた(p<0.05)。鱗屑は皮膚バリアクリームの塗布後から清拭後にかけて有意な増加が認められた(p<0.05)が、ワセリンが鱗屑にもたらす効果は個人差が大きかった。

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