理学療法の科学と研究
Online ISSN : 2758-3864
Print ISSN : 1884-9032
1 巻, 1 号
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講座
原著
  • -体性感覚脱失を呈した脳出血3症例の研究-
    高杉 潤, 沼田 憲治, 松澤 大輔, 小出 歩, 阿部 光, 本間 甲一, 村山 尊司, 中澤 健, 清水 栄司
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1_17-1_22
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     ミラーセラピー(MT)の主な治療法略は健側肢の鏡像の運動観察によって鏡背後の患側肢に運動覚を誘発させる点にある。一方,鏡像の感覚刺激観察によっても体性感覚(referred sensation: RS)が誘発されることが報告されている。脳卒中後の体性感覚障害例もRSは誘発されるとの報告はあるが,その後の即時的な感覚閾値の変化や効果については明らかではない。そこで今回,被殻出血後に感覚脱失を呈した3例に対し,ミラーボックス(MB)の介入を試みた。結果,症例1は麻痺手にRSが顕著に即時的に認められ,介入後も感覚脱失の一過性の改善が確認された。症例2は受動的な触刺激ではRSは誘発されず,能動的触知覚(active touch)にてRSが誘発された。その後,受動的な触刺激でも徐々にRSが誘発され,介入後も一過性の知覚改善が認められた。症例3は,MB介入中,一貫して全くRSは誘発されず,介入後も変化なく脱失であった。今回の結果から,脳損傷例でもRSの有無や程度は個々に異なり,個人差があることが示唆された。また症例1のようにRSが強く誘発される場合,visual-tactile enhancementの更なる増強と体性感覚野の一過性の持続的活動が生じることが推察された。

  • 髙梨 晃, 塩田 琴美, 松田 雅弘, 加藤 宗規, 宮島 恵樹, 川田 教平, 野北 好春, 小沼 亮, 長濱 喜啓, 黒澤 和生
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1_23-1_27
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究は,新たに開発した軟部組織硬度計の模擬モデルおよび生体測定時の検査者内・間信頼性について検討した。【対象および方法】模擬モデル測定は,2種類の軟部組織硬度計を使用し,2種類の硬度の異なる高分子化合物を,10人の検査者により7回反復測定を行った。また生体硬度測定は,対象を健常成人女性1名とし,3人の検査者により,3種類の軟部組織硬度計を使用し,右側の僧帽筋上部,脊柱起立筋,内側ハムストリングス,内側腓腹筋の筋腹中央部を3回測定し,模擬モデルおよび生体測定における検査者内・間信頼性を変動係数と級内相関係数を用いて検討し,さらに模擬モデル測定時の硬度差および生体硬度測定時の測定値について検討した。【結果】模擬モデルおよび生体硬度測定における信頼性は高値を示した。また模擬モデル測定の測定値は2種類の機器ともに有意に硬度差を評価可能であった。さらに生体測定については,3種類の機器ともに異なる結果を示した。【考察】3種類の軟部組織硬度計は,模擬モデルおよび生体において高い信頼性を示す測定が可能である。また測定結果については,同一部位における治療効果判定などに使用することが推奨される結果を示した。

  • 竹内 弥彦, 吉村 実千晴, 竹山 由理恵, 三和 真人
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1_29-1_33
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は足圧中心を最大限前方に移動した立位姿勢において,視覚と母趾末節底部の触圧覚情報を変化させた際の足圧中心動揺特性に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常学生16名。感覚入力条件をOE-n(開眼-刺激なし),CE-n(閉眼-刺激なし),OE-s(開眼-母趾底部刺激),CE-s(閉眼-母趾底部刺激)とし,フォースプレート上で安静立位から重心を最大限前方へ移動させる課題動作を設定した。重心の最大移動位置における5秒間の足圧中心動揺量と動揺速度について前後,左右方向別に解析し,各感覚条件間の差について二元配置分散分析を用いて検討した。加えて,同区間のヒラメ筋と母趾外転筋の筋活動量を計測し,足圧中心動揺特性との相関関係を解析した。【結果】二元配置分散分析の結果,前後方向の足圧中心動揺量において,視覚要因と刺激要因の間に交互作用を認め,さらにt検定の結果,閉眼時においてCE-nに比較しCE-sが有意に低値を示した(p<0.01)。相関分析の結果では,足圧中心動揺と筋活動量の間には有意な関係は認めなかった。【結語】本研究の結果から,視覚情報が遮断された状況下では,母趾底部の触圧覚情報への依存度が増し,その作用は前後方向のCOP動揺量および動揺速度の制御に関与することが示唆された。

  • -長座位体前屈時の骨盤角測定の有用性に関する検討(第2報)-
    小沼 亮, 髙梨 晃, 烏野 大, 藤井 顕
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1_35-1_39
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究では,先行研究から抽出された課題を基に,実験1として長座位体前屈の基本姿勢について再検討し,基本姿勢(3群)の違いによる骨盤角変化値および前屈時骨盤角を比較・検討した。更に,実験2としてハムストリングスへの直接的介入(持続的筋伸張法)前後での比較・検討をし,長座位体前屈時の骨盤角測定の有用性に関して検討を行った。【対象】[実験1]健常男性で基本Ⅰ群26名(年齢19~29歳)・基本Ⅱ群11名(年齢19~26歳)・基本Ⅲ群10名(年齢18~29歳)の3群に分類した。[実験2]健常男性でコントロール群7名(年齢19~26歳)・ストレッチ群7名(年齢18~23歳)の2群の分類した。【方法】[実験1]両側の膝伸展可動範囲を測定後,長座位にて各群の基本姿勢を設定した上で,傾斜角度計を用いて静止時骨盤角を測定した。そして,長座位体前屈と同時に前屈時骨盤角を測定した。統計処理は,各群における同一検者間の級内相関係数(ICC)を算出した。また,3群間の(1)静止時骨盤角・(2)骨盤角変化値・(3)前屈時骨盤角,を比較・検討し,Spearmanの順位相関係数を用いて統計的有意性の有無も検討した。[実験2]各群ともに安静後(T1),長座位にて基本姿勢(基本Ⅲ群の方法)を設定した上で静止時骨盤角を測定した。そして,長座位体前屈と同時に前屈時骨盤角を測定した。その後,コントロール群では更に安静後(T2)に,ストレッチ群では持続的筋伸張法実施後(T2)に,静止時骨盤角,長座位体前屈,前屈時骨盤角をそれぞれ測定した。統計処理は,各群の(1)長座位体前屈・(2)骨盤角変化値,を比較・検討した(T1・T2時点)。また,各群の(1)長座位体前屈・(2)骨盤角変化値,のΔ1(Δ1=T2-T1)を比較・検討した。【結果・考察】[実験1]各群においてICC(1,1)=0.8,ICC(1,3)=0.9以上と高い信頼性を示し,傾斜角度計を用いた骨盤角測定は検者内信頼性が高く有用であることが推察された。また,基本Ⅰ群と基本Ⅱ・Ⅲ群間において,静止時骨盤角,骨盤角変化値ともに統計的有意性を示した(p<0.05)。そして,基本Ⅱ・Ⅲ群ともに骨盤角変化値と膝伸展可動範囲間では有意な関連性を示した(基本Ⅱ群:p<0.05,基本Ⅲ群:p<0.01)。以上より,基本Ⅱ・Ⅲ群においては,基本Ⅰ群に比べハムストリングス筋長を個別的に測定できたと思われる。[実験2]T1・T2間における比較では,長座位体前屈・骨盤角変化値ともにストレッチ群において統計的有意性を示した(p<0.05)ものの,各測定値間における比較では,長座位体前屈・骨盤角変化値ともに2群間において有意差は認められなかった。以上より,ハムストリングスが長座位体前屈に影響を及ぼす1要因であることは推察でき,長座位体前屈時での骨盤角測定においては,ハムストリングスの柔軟性検査法として有用となる可能性が示唆された。

報告
  • 江澤 かおり
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1_41-1_46
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     PT士会では,若い会員が急増し,変化する職場環境への対応を迫られている。その支援の指針としてワークライフバランス(仕事と生活の調和・以下WLB )を推進することを提言したい。WLBは,官民挙げて推進される動きであるが,十分に認知されていない状況である。そこで,WLBについて解説するとともに,PT士会で行った調査報告を基にWLBを推進する利点と課題について述べたい。調査の結果としては,休暇の付与日数に比して取得が少なく,7.3%は残業が45時間を超えており。半数以上に疲労感があり,体調の不良の自覚があった。子育て支援については,支援内容の認知が低く,制度があっても利用しにくい環境があることがわかった。一方で仕事を休み,私生活を楽しむ時間の価値を87%が認めていた。
     そこで,WLBを導入してゆくための手法について紹介し,キャリア教育,復職支援,ストレスマネージメントといった支援の必要性について述べる。

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