社会情報学
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1 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 小郷 直言
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    かつて何かが存在したこと,あるいは,かつて何かが起こったことを示す痕跡は,情報として利用できるのではないか。痕跡を記号として読み取るまえに,痕跡がつくられてきた経過を辿ることで,より一層の意味を痕跡から読み取ることができるはずである。静的な痕跡をイキイキとした動的な風景の中で観ることができれば,痕跡を単なるインデックスとしてだけではなく,われわれの動作や仕草を誘導してくれたり,快適にしてくれたり,あるいは躊躇させたりするモノとして活用できるかもしれない。社会情報学という大枠では見過ごされやすいが,痕跡を,利用しやすい情報として緻密に外環境にデザインし,用意したなら,その世界はささやかではあるが住みやすいものになりはしないだろうか。また痕跡が繰り返し行われた行為の跡であることは貴重な情報となる。痕跡の意義とその利用方法を簡単な例示によって説明する。痕跡から見える社会情報学という論題でそんな期待を込めてみた。
  • 服部 哲
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿では,地域における位置情報やそれを利用するWebサービスの可能性と,情報の生産・流通・消費のすべての過程を扱う社会情報学に何が求められているかを議論する。地域を基盤とするコミュニティやNPOなど市民が主体的かつ自立的に取り組む地域貢献活動は,地域のさまざまな課題の解決や活性化のために不可欠である。それらの活動の大半は地域に根ざしており,そこで共有されるべき情報は位置情報をともなうものが多い。一方,GPS機能を搭載する機器の増加やソーシャルメディアの成長など,近年,位置情報を扱いやすくなっている。本稿では,まず,地域貢献活動に従事するグループが自身のWebサイトでとのような地図を利用しているかを述べる。つぎに,筆者が研究開発に取り組んでいる,実践的な位置情報ベースのシステムを紹介する。これらのシステムは現在進行形で地域で利活用されている。Webサイトの実態調査や実践的なシステムの開発研究の結果を踏まえ,情報システムの視点から社会情報学に求められていることを示す。
  • 野田 哲夫
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿では,オープンソース・ソフトウェア(以下,OSS)の開発スタイルとOSSによるビジネスの成立,そしてこれを対象とした学際的な研究動向をまとめることを通じて,インターネットが可能にした消費者の「参加」,さらに「集合知」が生産者に付加価値を創出し,ビッグビジネスの利益創出に吸収されていくメカニズムを明らかにする。これは,情報技術の発達(それによる生産方法の変化)を背景にした社会事象(そしてその相互作用)を学際的に研究する「社会情報学」の成果であり,また今後の課題でもある。
  • 五藤 寿樹
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 27-35
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿は,社会情報学と経営との関係について論説するものである。本稿では,社会情報学で取り上げられることが多いソーシャルメディアについて,それと経営の関係にについて.論述する。そのために,まず情報爆破と呼ばれている現象について記述し,その要求要素としてのソーシャルメディアの存在について言及する。次に,ソーシャルメディアのマーケティングにおける位置づけについて論述し,ソーシャルメディアの登場によりマーケティング活動の変容があったことについて論述し,問題解決としてソーシャルリスニングが行われている実態について論述する。最後に,このソーシャルリスニングはビッグデータ処理で行われるが,それは情報量の大きさのみならず情報密度の点から必要であり,ビッグデータ処理により付加価値の高い情報や新たな知見が得られることについて述べるとともに,研究手法としてはデータ集約型科学として機械学習によるデータマイニングを行うことについて論述する。
  • 伊藤 賢一
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 37-42
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,近年注目を集めている討議デモクラシーの議論を社会情報過程として位置づけ,今後の社会情報学を切り開いていく一つの可能性を示すことである。ドイツの社会学者ハーバマスに由来する公共圏的な空間をCMC空間に見いだそうとしてきた議論は必ずしも成功したとはいえないけれども,「討議デモクラシー」として実験的に行われてきたミニ・パブリックスの試みは,公共圏を実現するための成功例といえる。CMC空間を内部に含んだコミュニケーションのネットワークとしての公共圏を,現実的なものとして構想していく可能性は豊かに開かれているということを論じたい。
  • 櫻井 成一朗
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 43-47
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿では,人工知能研究者の立場から人工知能と社会情報学の関係について検討し,人工知能技術が他のIT技術と同様,社会情報学に大きな貢献をしていることを示す。次に,人工知能と社会情報学の最大の違いは,社会情報学がより良い社会の提案を求める点であることを論じる。その上で,文理融合に求められる要件を提示し,社会情報学会が真の文理融合を実現する学会となる可能性を述べる。
  • 山本 悠介, 関 良明, 諏訪 博彦
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 49-59
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    研究開発,学術,教育などの分野において,研究者は,文献を探索/入手/閲覧/評価し,資料としてまとめ,それに基づいて他の研究者と議論する。本論文ではこのような活動を文献調査活動と定義する。同じ組織・同じ期間に限らず,文献調査活動を共有・伝承する社会情報システムを構築することができれば,知識をさらに拡げることに寄与できる。本論文では,書誌情報と,文献調査活動に基づく研究情報を組み合せて,Webサービスの仮想書架として表現する手法RIAS-space (Research Information Accumulation and Sharing space)を提案する。研究情報をこの仮想書架に配置する指標を抽出するために,大学院生のゼミ活動を対象として,モデル化と分析を行い,指標を4つ抽出する。その適用性と有用性を被験者実験によって検証している。さらに,プロトタイプを構築し,RIAS-spaceの効果と限界を考察している。
  • 柳瀬 公
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 61-76
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    日本社会は,Beck(1986=1998)らが指摘するリスク社会を東日本大震災(2011年3月11日)で経験することになった。特に,福島第一原発事故は,事故後の避難計画や除染方法,食品や水の安全性,健康被害,風評被害,政府の対策,エネルギー問題,環境問題などのさまざまな問題を提起している。人びとがこうした「新しいリスク」に対処するとき,その主要な情報源となるものがメディア報道である。本研究では,「新しいリスク」の事例として「放射性セシウム汚染牛問題」を取り上げ,メディア報道が「新しいリスク」の情報を人びとに伝える際に,どのように報道の枠組み,つまり,メディア・フレームを使用するのかを,計量テキスト分析によって探索的に検討した。その結果,「放射性セシウム汚染牛問題」の新聞報道では,「現状フレーム」,「対策フレーム」,「原因フレーム」,「要求フレーム」,「被害フレーム」,「人体への影響フレーム」,「食品フレーム」,「原発事故フレーム」の8つのメディア・フレームが強調されていた。さらに,これら8つのメディア・フレームの出現数は,時系列で変化していたことが明らかになった。以上の知見から,「放射性セシウム汚染牛問題」の報道は,8つのメディア・フレームに依拠し,そのメディア・フレームを時期的に変化させることで,リスク事象の報道内容にストーリー性をもたせ,短期間でパッケージ化されていることが見出された。しかし,短期間でのメディア・フレームのパッケージ化による情報伝達が,リスク社会下に生きる人びとに対して,「新しいリスク」の危険性を浸透させることに適しているのかといった問題点も挙げられた。
  • 中原 宏樹, 柳澤 剣, 山本 佳世子
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 77-92
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本研究は地域知の例として地域資源に関する情報を取り上げ,Web-GIS (Geographical Information Systems), SNS, Wikiを1つのアプリケーションとして統合し,地域コミュニティにおける地域知の蓄積・共有に基づく地域住民間の効率的なコミュニケーションを可能にするWeb-GISを設計・構築して,運用・運用評価まで行うことを目的とした。本研究の結論は,以下の3点に要約することができる。(1) SNS・Web-GIS・Wikiの3つのWebアプリケーションを統合して,本研究の目的に適合したWeb-GISを設計・構築し,時間的・空間的・人的制約の緩和を可能にした。また運用対象地域として東京都調布市を選定し,現状調査を行った後にシステムを詳細に構成するとともに,本運用前に運用試験とその評価を行って改善点を抽出し,システムを再構成した。(2) 本運用は大学生以上の地域住民を対象として行い,本運用後の利用者へのアンケート調査結果に基づく評価では,本システムの既存の地図サービスと比較した操作性の高さ,地域情報を得る手段としての今後の希望利用頻度の多さが示された。また運用評価結果から,投稿情報の整理と個人の画面表示に関することが本システムのシステム的な側面からの改善策としてあげられた。(3) 本運用中のログデータを利用したソシオグラム分析を行うことにより,利用者間でのコミュニケーションの成立を確認した。また女性の利用者の方が積極的に多くの利用者とコミュニケーションを取っていることと,時間経過とともに特定の利用者間でコミュニティが構築されていたことが推測できることが明らかになった。
  • 崔 銀姫
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 93-108
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本稿では,1950年代の日本における「観光アイヌ」の誕生をめぐって全国的な流行と社会的なブームに至るまでの歴史を,近代後半からおよそ60年間(1899年の「北海道旧土人保護法の制定」〜1959年の『コタンの人たち』)の時代における「観光アイヌとは何か」の問題を中心に,単なる「差別」と「同化」の問題に帰結させるのではなく,20世紀初期から半ばのメディアの空間の成立と変容をメディア文化論の視点から鳥瞰的に検討することで,「覧(み)せる/観(み)られる」といった身体を媒体にした経験のなかに隠れていた歴史社会的意味とその変容を考える。考察の結果,第1期の時代(1899年〜1926年)において,アイヌにとってはそうした博覧会の主催者たちの欲望への理解には至らず,「観られる」アイヌの身体の方向性は異なったものであった。その後,第2期の時代(1927年〜1945年)になるとアイヌの大きな変化としては,「民族意識の高揚」とアイヌ自らが各種の著作物を出版したことであった。その後の第3期(1946年〜1959年)の戦争が終わってから1959年までの特徴は,「観光の介入」による変化があった。「観光アイヌ」とは,さまざまなファクターが相まった60年間のなかで「観られる」アイヌとして風景化されていたといえる。
  • 加藤 千枝
    原稿種別: 本文
    2012 年 1 巻 2 号 p. 109-121
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本研究では青少年女子のメールボックス利用実態を明らかにすることを目的として,女予中高生9名に対し,半構造化面接を実施した。その結果,青少年女子は主に「同集団他者」や「他集団他者」との関係形成の為にメールボックスを利用していることが明らかとなった。また,「他集団他者」の「異性の者」からメールボックスを介して連絡を受ける者も複数おり,「異性の者」と実際に会った結果,「サイバーストーカー」等の被害に遭った青少年女子もいた。一方で,メールボックスを介して知り合った「異性の者」と交際した経験を持つ者もおり,メールボックスは携帯電話のメールとは異なる使い方をされているメディアであることが明らかとなった。
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