社会情報学
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4 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集:選挙
  • 河井 大介
    2016 年 4 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

    1990年代以降,投票率の低下や政党離れが進み,積極的無党派層やそのつど支持層と呼ばれる層が議論されてきた。このような中,2013年に解禁されたネット選挙を踏まえ,2014年衆院選における政党に対する態度によるメディア利用の相異を探索的に分析した。政党に対する態度は,公示直前の時点で,支持政党を持たず政治的関心も低い無関心層,支持政党は持たないが政治的関心の高い積極的無党派層,政党支持度において1つの政党のみを支持する1政党支持層,政党支持度において複数政党を支持する複数政党支持層に分類した。ふだんのメディア利用と選挙期間中のメディア利用が,この政党に対する態度によってどのように異なるのか分析を行った。分析の結果,積極的無関心層は他の層と比べてネットを利用せず,複数政党支持層は新聞やネット利用が他の層よりも活発であり,ネット選挙解禁の恩恵を最も受けていると考えられる。つまり,積極的無関心層は受動的な情報接触が比較的多く,複数政党支持層は能動的な情報接触が比較的多い可能性が示唆された。

  • 吉見 憲二
    2016 年 4 巻 3 号 p. 15-29
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

    日本では長らくインターネットを利用した選挙活動が禁止されていたが,2013年4月の公職選挙法改正を契機にネット選挙が解禁されることとなった。ネット選挙解禁後の初の国政選挙は第23回参議院議員選挙であり,2014年12月の第47回から衆議院議員総選挙もネット選挙解禁を迎えている。

    本研究では,先行研究において選挙期間中の候補者のソーシャルメディアにおける投稿内容分析の手法が確立されていない一方で,新聞社により単純な単語抽出からの分析がなされている現状を問題意識とし,各政党における利用傾向の差異について検討した。分析結果より,別アカウントの利用や代理投稿,外部サービスの利用を行っている投稿が多数存在し,単純な単語抽出からではこうした特徴的な投稿の差異が十分に捉えられないことを明らかにした。加えて,こうした特徴的な投稿の利用傾向は政党間で異なっており,単純な単語抽出からの分析を政党間の比較に用いることが不適切である可能性が示された。

  • 清原 聖子
    2016 年 4 巻 3 号 p. 31-46
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は,2014年中間選挙を事例として,スマートフォンやソーシャルメディアの急速な普及といったメディア環境の変化によってアメリカの選挙キャンペーンの特徴にどのような変化がみられるのか,政党,政治コンサルタント,政党や候補者陣営とは独立した外部団体の3つのアクターに焦点を当てて検討した。その結果,政党はソーシャルメディアを活用して有権者へのリーチ方法を増やしていること,有権者からの資金調達にはソーシャルメディアよりも電子メールが有効であると考えられていること,メディア環境の変化に伴いメディアコンサルタントに、よりクリエイティブ性が求められ,さらにキャンペーンのデジタル化が進むことで多くの政治コンサルタントが必要とされていること,Super PACは消耗戦となる予備選挙を戦う上で重要な資金供給源としての役割を果たしていることがわかった。最後に,本研究において明らかになった点から,政党には候補者陣営に対して強みとなる電子メールリストや有権者情報のデータベースがあるため,デジタル・メディアをさらに活用することで,今後アメリカの選挙キャンペーンにおける政党のプレゼンスが高まることも考えられる。

原著論文
  • 瀬尾 華子
    2016 年 4 巻 3 号 p. 47-62
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

    2011年の福島第一原子力発電所事故は,日本の社会全体の政策決定,および意思決定の在り方への関心を集める契機となり,原子力発電に好意的な社会意識や世論の「メディア」を通じた形成が問題化した。本稿では,今日に至るまでの原子力に関する社会意識の形成の始まりを1950年代から60年代に求め,その形成に用いられていた電力産業や官公庁の広報メディアである「PR映画」に原子力がいかに描かれたのかを分析した。その際,PR映画における社会的文脈としての発注者と受注者への視点からPR映画における原子力の表象をみた。その結果,1950年代末葉から60年代までの原子力のPR映画を通して,「平和利用」,「科学技術」,「近代化」が描かれていたことが明らかになり,PR映画は社会的な問題に対応するように表象の形を変容させながら,原子力を啓蒙していたことが示された。しかしながら,そのPR映画における原子力への意味付けは必ずしも単線的なものではなく,1960年代半ば以降のPR映画においては原発推進主体の意図に回収されない,受注者である製作者たちの懸念がもたらした「記録」としての意味付けが存在していた。このようにPR映画と原子力の関係をその社会的文脈の中で検証することは,PR映画という文化遺産の再評価,ならびに原子力への社会意識の形成過程の解明のための新たな一歩になり得るものである。

活動報告
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