決算発表は, 投資家にとり最も重要な会社情報のひとつであり, できるだけ迅速に行われることが望ましい。したがって, どのような特性を持つ企業が決算発表をより迅速に行うべく決算発表時期を改善するのかを解明することは重要である。本稿では, そのひとつとして内部統制システムに着目し, 会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針についての適時開示資料を利用して基本方針の改定の有無, 改定回数, および改定時期を推定することにより内部統制システムに係る企業の構築姿勢を捉えて, 内部統制システムの構築と決算発表時期の改善の関係を検証している。
検証の結果, 本稿では, 内部統制システムの構築に積極的に取り組む企業は, 前決算期よりも通期決算発表が迅速に行われるように当決算期の決算発表時期を改善するとの証拠を提示している。すなわち, 本稿では, 内部統制システムの構築に積極的に取り組む企業は, 当決算期の決算発表所要日数(決算日から決算発表が行われるまでの日数)を前決算期よりも短縮することを示している。また, 本稿では, 前決算期には通期の決算発表時期として適当とされる「決算期末後45日以内」またはより望ましいとされる「決算期末後30日以内(決算期末が月末である場合は翌月内)」に決算発表を実施できていなかった企業であっても, 内部統制システムの構築に積極的に取り組むことにより当決算期にはかかる時期に決算発表を実施できるようになることを示している。
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