社会情報学
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基調講演
特集「ジェンダー」・論文
  • 杉原 名穂子
    2018 年 6 巻 3 号 p. 19-33
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/12
    ジャーナル フリー

    本稿はジェンダー論の観点から社会関係資本(SC)の効果について実証的に検討するものである。SC研究はしばしばジェンダーブラインドであるという批判が寄せられてきた。それはSC生産活動が性別役割を強化・再生産することに無自覚であることへの批判である。本稿ではそれらの批判をふまえ,特に家族での活動およびそこでの権力作用に注目し,それらが個人が所有するSCにどのように関連しいかなる利益をもたらすか,都市の家族を対象にした量的調査から分析した。

    その結果,次のことが明らかになった。豊かなSCから多くの利益を得ているのは女性の方である。満足感,健康,娯楽活動,市民意識などとの関連をみると,男性にとっては本人が所有する経済・人的資本と家族が資産となっているのに対し,女性では自身と家族に加えネットワークが資産である。女性にとって特に,橋渡し型SCは満足感,娯楽,健康,市民意識の醸成といった利益をもたらしている。

    家族内SCは男女とも多くの面でプラスの効果をもたらしている。密な家族は家族内SCを用いてネットワークをつくる。ただし,密な家族とは協力行動を多くおこなう家族であり,女性のケア活動への大きな貢献を意味するのではない。ケア活動は女性の橋渡し型SCの構築を阻害する。つまり,家族内SCを増やすという提案は男性にはプラスの利益をもたらすが,女性の場合には橋渡し型SCの醸成を阻害しない途を探ることが必要である。

  • 趙 慶喜
    2018 年 6 巻 3 号 p. 35-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/12
    ジャーナル フリー

    本稿はここ数年韓国で熾烈な論争を引き起こしている女性嫌悪言説を追跡したものである。「嫌悪(혐오)」という語には,憎悪(hate)と嫌悪(disgust),そして恐怖(phobia)が混在している。嫌悪は新自由主義時代のグローバルな現象であると同時に,韓国社会を強力に規定してきた分断イデオロギーや敵対性の記憶によって増幅される情動である。本稿では,2015年以後に起きたいくつかの出来事を通して,「女嫌」という情動の増幅と転換の過程を考察した。

    江南駅女性殺害事件とともに触発された韓国の「女嫌」論争は,メガリアンという新たなフェミニスト集団を誕生させた。メガリアンは女性嫌悪に反対するという消極的な立場にとどまらず,「女嫌嫌」を目指すミラーリング戦略をとった。ミラーリングは単に原本のコピーに止まらず,原本がいかに差別と嫌悪にまみれたものであるのかを反射を通して知らしめる戦略であった。彼女たちは,男性たちの女性への快楽的な嫌悪表現や日常的なポルノグラフィをそっくりそのまま転覆することで男女の規範を撹乱した。メガリアが爆発的な波及力を持ちえたのは,女性たちの共感と解放感という同時代的な情動が共振した結果であった。

    しかし,女嫌をめぐる葛藤は単なる男女の利害関係をこえたより複雑な分断にさらされた。とりわけLGBTへの反応は,右派/左派あるいは世代や宗教のあいだの様々な対立構図を生み出した。たとえばキリスト教保守陣営による「従北ゲイ」という言葉は,反共と反同性愛を結合させることで韓国社会の内なる敵への憎悪と嫌悪を凝縮させ,フェミニストやLGBTなど既存の境界を撹乱する存在に対する過剰な情動の政治を作動させた。本稿は「女嫌」言説の増幅過程を通して,それが韓国社会に蓄積された様々なイデオロギー的葛藤のひとつの兆候であることを明らかにした。

  • 金 相美
    2018 年 6 巻 3 号 p. 49-62
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/12
    ジャーナル フリー

    本研究は2013年7月21日に行われた参議院議員通常選挙時に男女有権者930人を対象に行なったウェブアンケート調査の結果をもとに,政治プロセスにおける女性有権者の投票行動,政治関心,政治知識など政治的占有傾向について分析・考察を行うことを目的とする。女性有権者は男性有権者より投票率,政治への関心,政治有効性感覚,国内政治への満足度,政治知識が有意に低い結果が示された。政治関連イシュー的政治知識においては女性有権者の知識習得度が低いことが判明し,政治社会化における男女差がその背景に存在している可能性について考察した。

研究
  • 後藤 晶, 本田 正美
    2018 年 6 巻 3 号 p. 63-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/12
    ジャーナル フリー

    本研究では,設置が広がっている監視カメラについて,その社会的許容度を測るためにアンケート調査を行った。そこで,どのような場面やどのような条件下で監視カメラの設置や利用が社会的に許容されているのか考察する。具体的には,「監視カメラに対する賛否」「犯罪の予防/検証」「事故予防/検証」「自然災害の予防/検証」についての人々の意向を報告する。その結果,監視カメラに対する賛否にはデモグラフィーが影響すること,予防効果に比べて検証効果が高く評価されていることが明らかとなった。

    さらに,監視カメラの設置に対して否定的な意志を表明した人々を対象とした調査においては,自治会に比べて警察・企業による監視を望ましく思う一方で,個人による監視を望ましく思わないことが明らかとなった。加えて,住宅周辺に比べて,交通量の多いところ,職場や公共施設,山林および河川における監視を望ましく思うことなどが明らかとなった。この結果は,監視に対して否定的な人々にとっても監視主体および監視対象の公共性が高まれば高まるほど監視を許容すること,監視主体の公共性が高いとしても,自宅などの公共性の低い空間の監視を望まないことが示された。

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