科学・技術研究
Online ISSN : 2187-1590
Print ISSN : 2186-4942
ISSN-L : 2187-1590
2 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
特集
連載
総論
  • 陳 清泉, 蹇 林 
    2013 年 2 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    18世紀中頃に起こった産業革命によって、地球環境の熱平衡と生態学的な平衡が崩れ始めている。エネルギー消費と温室効果ガスの急激な排出増加は、人間の持続可能な発展を脅かしつつある。その唯一の解決策は、新しいエネルギーの構成を確立することである。しかし、新しいエネルギー構成は、情報という概念との統合なしで効果的に行えない。この問題に関し、エネルギーと情報間の相関関係について提案する。最初に、発展段階の新しいエネルギー構成、すなわちエネルギー源の多様性やエネルギーの流れの特徴について紹介をする。その中で、エネルギー貯蔵の重要な役割について明らかにする。エネルギーを貯蔵することによって、エネルギーシステムの効率、クリーン度、信頼性、安定性を強化することができると考えられる。エネルギー貯蔵システムを効率的に機能させるための重要課題は、情報をエネルギーに融和させることである。本論の目的は、持続可能な発展のためのエネルギーと、情報の相関的関係の重要性を明示することである。昨今の大容量のデータを扱う時代において、エネルギーと情報の関係に注意を払わなければならない点を指摘する。
主張
  • 尾形 健明
    2013 年 2 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    筆者が40年間携わった電子スピン共鳴(ESR)研究について振り返った内容である。ESRとの出会いは、大学4年生の卒業研究である。以来、山形大学を定年退職するまで、ESRの魅力に取りつかれ、様々な試料のESR測定や新規装置の開発を試みてきた。なかでも、生体計測用L-バンドESR装置の開発とその応用研究は特筆すべきものであり、世界に先駆け、ラットやマウスなどの小動物を生きたままで測定して、生体内に存在する生物ラジカルを検出することができる装置を開発した。この装置は、生体内のレドックスバランス計測に有効であり、酸化ストレス評価を生きたままの動物を使って行うことができる。この拙稿が、若手の研究者・技術者の参考になれば幸いである。
原著
  • 杉田 正明, 西村 明展, 加藤 公, 福田 亜紀, 松田 和道, 須藤 啓広
    2013 年 2 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    高地で行われるスポーツ競技会に対し、平地と同様のパフォーマンスが発揮できるよう「高地順化」が求められる。しかし、高地にまとまった期間、滞在しトレーニングを行うには経済的、時間的にも負担が大きく、さらに高地でのトレーニングではトレーニングの強度や量の低下が心配される。2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会のサッカー男子日本代表は、事前に平地(国内)で安静時に低酸素を吸入し、高地順化を促進する取り組みを行い、ある一定の成果を収めることができたとされている。しかし、特殊なツールを用いた安静時での低酸素吸入に関しては、不明な部分も多く、トレーニングの順序性を考える上で、安静時の低酸素吸入がその直後に行うトレーニングへ悪影響を及ぼす可能性が危惧されるところである。そこで、本研究の目的は、低酸素吸入後にオールアウトまでの運動を行い、通常環境(常酸素)で行った運動と比較して、生体への負担度や運動能力に影響が生じないかどうかを検討することである。8名の健常な男性を対象とし、安静時に低酸素吸入ツールを用いて低酸素吸入(SpO2 88~92 %;1時間のプログラム)をさせ、安静(常酸素)30分後にハンドエルゴメーターを用いて多段階漸増負荷法でトレーニングをさせた。また、低酸素吸入をしない環境(常酸素)でも同様のことを行わせた。各負荷での心拍数、血中乳酸濃度および主観的運動強度(RPE)の値は負荷が上がることに上昇したが、各測定項目の最大値も含めて低酸素吸入の有無による差は認められず、運動継続時間についても有意な差は認められなかった。本研究の結果より、平地で安静時に低酸素吸入をさせても、30分後の平地での通常の運動トレーニングには悪影響を及ぼさないと考えられた。
  • Tomoko Ueno, Hiroyuki Noda, Tateaki Ogata
    2013 年 2 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    We have investigated the intestinal absorption and metabolism of the polyphenols contained in Acanthopanax sieboldianus Makino (Ukogi in Japanese) in rat plasma using a liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS). Ukogi mainly contained chlorogenic acid, rutin, and kaempferol 3-O-rutinoside. These polyphenols were detected in non-hydrolyzed rat plasma 0.5 hour after oral administration, and the concentration of rutin was 13.6 ± 3.65 nM. The metabolized compounds of kaempferol sulfoglucuronide and 3'-O-methylquercetin sulfoglucuronide were identified by exact mass determination and exact mass mass spectrometry/mass spectrometry (MS/MS) in the plasma of rats fed a 5 % Ukogi diet for 8-24 days. Antioxidant potential of the metabolized compounds is discussed concerning a beneficial effect in the body via antioxidation caused by not only scavenging superoxide but also blocking superoxide generation.
  • 桑木 貴之, 福島 真理成, 大角 義浩, 幡手 泰雄, 塩盛 弘一郎, 清山 史朗, 武井 孝行, 吉田 昌弘
    2013 年 2 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    Nail decoration causes damage of nails though the use of polish remover containing harmful compounds. Therefore, development of a method for repairing the damaged nails is important because they have no ability to heal themselves. Hydrolyzed keratin has attracted much attention as a repairing agent of damaged nails. However, application of raw hydrolyzed keratin to damaged nails is impractical because the material is sticky and niffy. The purpose of this study was to develop hydrolyzed keratin-loaded microspheres for overcoming the issues. We used casein, a protein, as a microsphere material. Hydrolyzed keratin-loaded microspheres were prepared through water-in-oil (w/o) emulsion. Cross-linking of casein and hydrolyzed keratin dissolved in the aqueous solution were achieved by glutaraldehyde. After preparation of the microspheres, they were frozen at -20 °C or -196 °C, and vacuum-dried. Inner structures of the microspheres were observed using a scanning electron microscope (SEM). Freezing temperature of the microspheres influenced the inner structure. We confirmed that low freezing temperature resulted in decreased mechanical strength of the microspheres and the breaking load was lower than minimum adult pinch strength. Subsequently, we examined the effect of the volume ratio of aqueous phase to oil phase (Φw/o) on recovery ratio of the microspheres. Much difference among the recovery ratio at each Φw/o was not observed. This result shows that the emulsion system in this study is a promising for a large-scale production of the microspheres for nail care.
  • 栗田 幸秀, 野田 博行, 飯塚 博, 生井 恒雄, 長谷 修
    2013 年 2 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    酸化マグネシウム(MgO)共存下における、ローズマリー、タイム、セージおよびクローブ等の植物由来成分の抗菌性を細菌の増殖に伴い発生する二酸化炭素およびメルカプタン発生量から評価した。その結果、ローズマリーおよびクローブは72時間経過後でも二酸化炭素(CO2)およびメルカプタン発生を抑えていることが明らかとなった。次に、高いCO2およびメルカプタン発生抑制効果が認められたローズマリーおよびクローブをMgO共存下でイネの苗いもち防除効果を調べた結果、化学農薬(ベンレートT水和剤)の処理には劣るものの発病率は抑制され、それぞれ蒸留水(DW)処理区に対して危険率1 %と5 %で有意性が認められた。これらの防除効果を、ポリフェノールとMgOが反応して生成する過酸化水素、MgOおよびポリフェノールの相乗効果として議論した。
  • Elsayed Elbadry, Zhiyuan Zhang, Yuqiu Yang, Hiroyuki Hamada
    2013 年 2 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    Recycled needle punched natural jute fiber mats were used to reinforce unsaturated polyester matrix composites via modifying the hand lay-up technique with resin pre-impregnation into the jute fiber mats in vacuum. The notch sensitivity of these composites was investigated by using the characteristic distance do calculated by Finite Element Method (FEM) according to Whitney and Nuismer model definition. In this work, the concept of the characteristic distance was discussed from the point view of fracture mechanics, therefore the aim of this study is to investigate and reconfirm the physical meaning of do by investigation the fracture toughness (KIc) of jute mat composites (JMC) based on do calculated by Finite Element Method (FEM) with width, W, to the hole diameter (D = 10 mm) ratio (W/D = 3) with 25 wt% fiber weight content. The results showed that JMC composites in terms of residual tensile strength (n/o) (the ratio of notched to unnotched strength) that there is only 16 % loss in the tensile strength due to the presence of the hole. Moreover, the experimental maximum load during tension test with hole is almost near to the maximum load calculated using KIc and do which validates the physical meaning of do which represents the distance from the hole boundary at which the brittle fracture starts to occur.
  • 藤井 聡
    2013 年 2 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、デフレーションに突入した1998年から2010年までのデータを用いて、中央政府の公共事業が日本のマクロ経済に及ぼした事業効果についての分析を行った。分析においては公共事業による内需主導型の経済対策にあわせて外需主導型の経済対策に対応する総輸出額の影響を考慮した。その結果、中央政府の公共事業の1兆円の増加(減少)によって、名目GDPが約5兆円増加(減少)すること、そしてそれを通して、デフレータ、失業率、平均給与、被生活保護者数がいずれも改善(悪化)し、最終的に総税収が1.6兆円、出生数が1.7万人増加(減少)するという分析結果が示された。一方、総輸出額の増加にはそうした広範な効果は検出されなかった。
  • 針金断面の硬さ試験
    辻 賢一, 高井 由佳, 後藤 彰彦, 濱田 泰以
    2013 年 2 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    京都で作製される金網は京金網と呼ばれ、京都の文化や産業を支える道具や建築物に使用されてきた。しかし現在、京金網の工房は京都市内に5軒のみとなっており、京金網製作の技術のコツやカンの解明し後世に伝えることが急務となっている。これまで筆者らは亀甲網の製作における熟練者と非熟練者の手指の動きの解析を行ってきた。この結果、亀甲金網を製作する際の針金を「ねじる」動作中の示指の遠位指節間関節の移動速度変化が、熟練者と非熟練者とでは異なることが明らかとなっている。熟練者においてはねじり作業開始から増加→減少→増加と変化していたのに対し、非熟練者は何度も増減を繰り返していた。手指の移動速度の変化が何度も起きている場合、針金に何度も負荷が加えられている可能性が高く、加工硬化への影響が大きくなると考えられる。そこで本研究では、熟練者と非熟練者が製作した亀甲金網の「ねじれ部」の針金断面の硬さ試験を行い、金網作製の経験年数が針金の加工硬化におよぼす影響を明らかにした。熟練者および非熟練者に亀甲金網の作製を指示した。亀甲は2本の針金を2回ねじることで作製される。このため、1回目のねじれ部、2回目のねじれ部、1回目と2回目のねじれ部の境界にて針金を切り出し試料とした。また、比較試料として未使用の針金を準備した。これらの試料に対して、ビッカース硬さ試験をおこなった。この結果、未使用の針金と比較し、熟練者、非熟練者とも加工硬化が生じていた。非熟練者の針金断面の硬度は熟練者よりも高く、熟練者は必要最低限の力を針金に加えながら金網を編んでいることが示唆された。
  • 本田 千秋, 小野寺 伸也, 伊藤 知之, 小林 卓巨, 伊藤 智博, 立花 和宏, 仁科 辰夫, 亀田 恭男
    2013 年 2 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    リチウムイオン二次電池の合剤スラリーにはPVDFがバインダーとして使われている。電池に要求される性能のパラダイムシフトに伴いPVDFのさらなる改善が求められている。しかしながら、PVDFの簡便な評価方法は見当たらない。本研究ではPVDFのNMP溶液の電気的物性について調査することを目的とし、交流インピーダンス法を使ってPVDFのNMP溶液の電気的物性について調査した。その結果、NMP単体とPVDFを溶解したNMPでは電気的物性が異なり、溶解したPVDFの種類によって低周波領域のインピーダンスに顕著な差が現れることを見出した。
短報
  • 岡本 晃, 池田 宏史
    2013 年 2 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    毛髪は濡れている時に、毛表皮が開いた状態になるので、ヘアドライヤーをかけすぎると毛髪が損傷しやすい。本研究では、これまでの熱風が吹き出し、髪の毛を乾かすものではなく、吸引して髪を乾かす形式のドライヤーの開発を行った。吸引式ヘアドライヤーは、毛髪を吸い込むことにより乾燥させ、カールまたはストレートに形成させることを目的としている。螺旋状の空間に、濡れた毛髪を熱風と共に吸い込み、毛髪の水素結合をカール状、もしくはストレート状に再結合させる。特徴として、ブラシやコームを使用しないため、毛髪を摩擦抵抗などで傷めない。吸引による風が、コームやブラシの役目を行い、摩擦抵抗なしで毛流を整えることができる。ブラシなどで巻きこめない曲毛や短い毛も、馴染ませることができる。また、片手で頭髪を整えることでき、毛髪が飛散せず熱風が顔や頭皮に晒されることがない特徴がある。
feedback
Top